オレもいる! 左内転筋痛で出遅れていたソフトバンクの新外国人リック・バンデンハーク投手(29=韓国サムスン)が、対外試合初登板し、3回を無安打無失点(1死球)に抑えた。2月17日の紅白戦以来、約1カ月ぶりの実戦。開幕ローテ候補だったオランダ人右腕は最速も150キロを記録し、強烈に存在をアピールした。

 韓国で最優秀防御率と最多奪三振の2冠に輝いた男の実力は本物だった。肌寒さの残る山口・由宇で、広島打線にヒットを許さない快投。2軍相手とはいえ、来日初の対外試合でいきなり片りんを見せつけた。

 プレートの一塁側に立ち、198センチの長身を生かしたフォームから投げ下ろす直球は最速150キロ。切れのあるスライダーも交え、次々と内野ゴロの山を築いた。スライダーが曲がりすぎ、2回の先頭土生に死球を与えた以外はパーフェクト。3回には外角直球で桑原を空振り三振。5カ国語を操る男は指先の器用さも抜群で、客席のカープ女子からため息が漏れた。

 「体が全然問題なかったことがすごくよかった。前回、紅白戦で投げて以来だし、今日は敵チームに対してしっかり投げることができたのが収穫。直球をコントロール良く内外に投げ分けることができた」。球数は35球。変化球はスライダー、カーブのみでチェンジアップを投げる機会はなかったが「次はもっと長いイニング、球数を投げたいね」と、自然と声も弾んだ。

 来日当初、開幕ローテ候補の1人として期待されていたが、キャンプで左内転筋を痛め、先発争いから離脱。日本代表戦に臨む欧州代表も辞退し、早期復帰を目指してきた。外国人枠の争いも競争は激しいが、異国の地で心が折れることはなかった。

 摂津、スタンリッジ、中田、松坂、大隣の5人は既にローテ入りが決定的。現状、残る1枠を東浜と武田が争う。だが、バンデンハークが復帰したことで、首脳陣は4月以降も先発の人選でさらに頭を悩ませることになりそう。今後の状況次第では大逆転での開幕ローテ入りにも望みがある。

 「(1軍に)上がりたい気持ちは常に持っている。今、一番大切なのは状態を上げていくこと。今日でさらに1歩前進したと思うし、このまま調子も上がってくると思う」。オランダの剛腕が参戦し、12球団一厳しい先発争がさらに厳しさを増す。【福岡吉央】