えっ、ホンマかいな!? 阪神マウロ・ゴメス内野手(30)が3点を追う3回、反撃の適時打を放った。前夜7月31日は決勝の押し出し死球をマークも、タイムリーに限れば6月27日DeNA戦(甲子園)以来、25試合107打席ぶりとは…摩訶(まか)不思議。1発でかえすもよし、適時打もまたよし。とにかく、打点量産頼みます。

 鋭いスイングが体に巻き付いた。ゴメスのバットは1周して、今にも背中に当たりそうだった。3回2死一、二塁。4万6885人の観衆が、この日唯一の得点に酔いしれた。

 「毎試合ベストを尽くそうという気持ち。これからもそれを続けていくだけだよ」

 3点ビハインドからの打開役を託された。マウンドにはヤクルト石山。今季は7打数3安打、打率4割2分9厘のお得意様だった。1-1の並行カウントでやって来た、内角140キロに狙いを定める。力強い振りに導かれ、打球は三遊間を破った。反撃ののろしを上げる適時左前打は、ゴメスに勝負強さが戻った瞬間だった。昨年の打点王は意外にも、試合前時点で得点圏打率2割6分8厘と苦戦。適時打にいたっては、6月27日DeNA戦の初回以来、25試合、107打席ぶりとなった。

 真夏の怪奇現象? が解かれても、試合後のゴメスに笑顔はない。2回には一塁守備で7番デニングのゴロをはじき、失策で先頭打者の出塁を献上。試合前練習では、フェンス際に打ち上げてもらったフライを捕球する猛特訓を受けた。球際の強さにこだわっていただけに、失策後は自然と表情をこわばらせた。2点ビハインドの5回2死三塁では、右飛に倒れて食らいつくチャンスを生かせず。明暗が分かれた1日だった。最後はクラブハウスの入り口に寄りかかり、長いシーズンを見据えて気持ちを切り替えた。

 「野球なので勝つこともあれば、負けることもある。今日は終わった。また明日(2日)勝つことができるようにやっていくだけだよ」

 0・5ゲーム差に迫られ、敵陣は今日2日先発にアンダースローの山中を選択した。1カ月前、7月2日の今季初対戦では6回1点に抑え込まれた苦い記憶。そんな天敵にもゴメスは、3打数2安打(2二塁打)と動じない。首位再奪取へのカギはやはり、4番が握っている。【松本航】

 ▼ゴメスの、走者を置いた状況での適時安打は、6月27日DeNA戦1回2死一塁での二塁打以来、35日ぶり、107打席ぶり。この間7打点を挙げたが、内訳はソロ本塁打5、犠飛と押し出し死球各1。足かけ25試合で有走者打席は44度あったが、安打で走者をかえすことはなかった。