崖っぷちで、右の代打の切り札がスパークした。日本ハム矢野謙次外野手(34)が、極限の集中力と度胸で絶対守護神を仕留めた。1点を追う9回2死三塁。マウンドには楽天松井裕がいた。「腹を決めて自分の打撃をするだけ」。この試合まで、セーブ機会で失敗なしの若き剛腕の初球。チェンジアップをとらえた痛烈な打球が左前に弾んだ。サヨナラ劇へつながる同点適時打に、雄たけびを上げ、ガッツポーズを繰り返した。

 この日、妻と2人の子どもが夏休みを利用して札幌ドームで初観戦していた。6月に巨人から移籍後、単身赴任生活中。離ればなれで暮らす小学3年の長男に向かい、お立ち台で「丈太郎、見たかコノヤロー!」と絶叫した。喜びを爆発させた裏には、寸暇を惜しんで続けた努力がある。

 空路移動の際は空港のラウンジでiPadと、にらめっこ。「まだ、パ・リーグの投手は分からないから」。チーム関係者から拝借したデジタル機器で、スコアラーが製作した次カードの対戦投手が収録されたDVDをチェックすることもある。できる限りを尽くし、チームの勝利を追求してきた。怠らなかった事前準備が「勝ち切れて良かった」という熱い思いにつながった。【木下大輔】