球団創設時からのメンバーがまた1人、ユニホームを脱いだ。楽天の公式チアリーダー「東北ゴールデンエンジェルス」のAKI(上田亜樹さん)が23日、コボスタ宮城で行われたファン感謝祭で今季限りでの卒業を発表した。05年に楽天が新規参入してから12年間踊り続け、チームを鼓舞。東日本大震災を乗り越え、13年の日本一も経験した。チアチームを持つ11球団で最長のキャリアを誇ったレジェンドが、後輩へバトンを託す。

 最後まで笑顔を絶やさなかった。AKIは美しく、高く、足を振り上げてファンのボルテージを高めていく。「AKIちゃん!」の声援が飛ぶ中、元気いっぱいの踊りを仲間とともに披露。ラストダンスを終えると、サプライズが待っていた。スーツ姿の梨田監督が現れ、花束を手渡される。「1年目からの思いがよみがえってきた」と目元がほんの少し潤んだ。

 チア界の“レジェンド”だ。仙台大在学中に新規参入する楽天のチア募集に応募。「バレエは習っていたけど、チアは初めて。勇気を出した」と05年からプロ野球の世界へと飛び込んだ。以来12年間、ほぼ休まずに本拠地の試合で踊り続けて人気は選手に引けをとらないほどになった。「どんな時でも笑顔を意識した」と雨の日でも踊り続けて計算上の通算出場は800試合以上。さながら連続出場を続ける鉄人だった。

 東北のファンに支えられた。11年3月の東日本大震災。大きな被害に「フィールドで踊れる日が来るのか」と悩んだ。だが1カ月後に本拠地開幕戦を迎えられ、「踊れる幸せを感じた」。その後も被災地で踊り続け、「遠くから応援してくれる人がいる」と声援が力になったと振り返った。13年には日本一を経験。「雨の日でも最後までスタンドに残って声援を送ってくれたことに感謝」と話す。

 引退の理由は後輩が成長し、バトンを託せると判断したため。今後は「ダンスを続けていきたい。仕事でなく突き詰めていければ」と話し、球団に残る見込み。現役生活を振り返り「ただただ幸せだった」とかみしめた。【島根純】