勝負の分かれ目で悔しさだけが募った。同点の8回に投入されたのは、プロ5年目の守屋功輝投手(25)だった。故郷での初の凱旋(がいせん)登板は、しかし、ほろ苦さだけが残った。浅村とブラッシュに連打されて無死二、三塁。銀次をフォークで空を切らせたが、本来の小気味よさがない。

1死二、三塁でウィーラーへの初球だ。梅野は内角に構えたが、速球は外角高めへ。はじき返され、右翼への深い飛球になった。痛恨の右邪犠飛…。勝ち越し点を許すと、ベンチは島本に継投。だが、辰己に左前タイムリーを浴びて、さらに失点を重ねる。この2失点が致命傷になって敗戦。矢野燿大監督(50)は、期待をにじませつつ、ハードルを上げた。

「勝負の場面で投げられるところまで来たのは守屋の成長。そこからさらにステップアップするためには、あそこで抑えていくのが必要。また大きなところをクリアしていってほしい」

ベンチにとっても決断のタイミングだった。8回は強力打線のクリーンアップだ。藤川もスタンバイする状況で今季、中継ぎの一角で奮闘する守屋を選んだ。指揮官も「球児もだいぶ無理させている。勝ち越したら球児でいこうと思っていた。守屋で乗り越えられたらなというところで守屋でいった」と説明。藤川は先週末のオリックス戦で3連投していた。8試合連続無失点と好調の若き右腕に白羽の矢を立てたが抑えられず。コンディション不良でジョンソンが2軍降格して2勝6敗2分けになった。

守屋はこの日、家族ら20人を招待した。倉敷工で最後はコールド負けした思い出のマウンドで、またも勝負の厳しさを知った。守屋は「もうちょっと慎重に入っても良かったかなと。チャンスをモノにしないと、どんどん減っていく」と危機感をにじませる。倉敷でチームは過去25勝14敗1分けだった。好相性のグラウンドで敗れ、引き分けを挟んで4月以来2カ月ぶりの4連敗、貯金は約1カ月ぶりに2まで減った。じわりとしわ寄せが来る救援陣は、踏ん張りどころを迎えている。【酒井俊作】

◆阪神と倉敷マスカットスタジアム この日の楽天戦に敗れたが、95年の開場以降、通算25勝15敗1分けで勝率6割2分5厘の好成績。直近10戦も8勝2敗だ。98年5月26日中日戦では、川尻哲郎がノーヒットノーランを達成。倉敷市出身の星野仙一監督に率いられた03年7月8日は、広島戦に勝ち、セ球団史上最速の76試合目でマジック49を点灯させている。この年、18年ぶりのリーグ優勝を飾った。