阪神近本光司外野手(24)が、矢野監督のゲキに1発回答だ。

「日本生命セ・パ交流戦」の楽天戦(倉敷)で3回、一時勝ち越しの6号ソロ。ここ10試合で打率6分7厘と不調だったが、17日に矢野監督が出した“はい上がれ指令”に23打席ぶりの安打となる会心弾で応えた。1分けを挟んで今季ワーストタイの4連敗を喫したが、リードオフマンの復調は明るい光だ。

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悔しい黒星も真っ暗じゃない。調子を落としていた近本が、倉敷の夜空に光を突き刺した。3回、スカッとする1発を右翼スタンドへ。5試合23打席ぶりにともした「Hランプ」は一時勝ち越しのソロアーチとなった。

「(不振は)気持ちだけなので。しっかりチームに貢献したいと思っていました。このところ打つことができていなかったので、最高の結果になりました」

ゆっくりとダイヤモンドを回り、一塁側ベンチに戻ると祝福のハイタッチ。笑顔でヘルメットを脱いだ。

体の回転が飛距離を呼ぶ。170センチと小柄な近本が、うまく内角球に対応した。楽天塩見のカウント2-2からの8球目、内角低めの119キロスライダーをきっちりと捉えた。追い込まれてからファウル3球で粘った後の一振り。今季目標の1つに挙げていた「5本塁打」をこの1発で超えた。

打てない時期も矢野監督が1番打者としての起用を続けた。この試合に向けても打順不動を明言していた。「誰がどう見ても、結果は出ていない。凡打を見ても良くない。調子が落ちている。でもバットに当たれば何かが起こる打者。近本が機能していくのが、ウチの打線のリズムになってくる」。その期待に応えるべく、近本も必死にバットを振り込んだ。

“1発回答”に指揮官は「(カウントが)追い込まれていたけどパンチがあるところを見せてくれた。ホームランは近本のプラスアルファの魅力」と褒めた。続けて「いかに何回も出塁するかが、近本の相手にとって一番嫌がるところ。この1本をきっかけに行ってくれたら」と注文も忘れなかった。

68試合を消化したが、まだシーズンは半分以上残っている。6月の月間打率は1割9分7厘と、確かに近本は落ち込んでいた。「そのときの状況だったり、場面に応じたプレーをしていけたら…」。気負うことなく欲張らずに試合へ臨む。結果が出なくても、無理にスタイルを変える必要もない。不動の構えでトップバッターが、ここから加速する。【真柴健】