日刊スポーツ評論家陣による今回の「野球塾」は98年横浜(現DeNA)の日本一監督、権藤博氏(80=野球評論家)です。阪神は早くも自力優勝の可能性が消え、今季ワーストタイの6連敗でBクラスに転落。大逆襲に転じるには攻撃陣の奮起、荒々しいスイングが必要と権藤節で厳しく提言しました。【取材・構成=松井清員】

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テレビ解説などで中日3連戦を見たが、阪神打線のスイングはお粗末だった。中日はプロの振りだったが阪神はまるで高校生に見えた。ひと言で言えば積極性が全くない。先頭が凡打したら自分も凡打してはいけないと、より慎重なチマチマしたスイングになる連続。これでは全然迫力がないし、相手投手にもプレッシャーがかからない。バットは何のために持っているの? 振るためじゃないの? それも得点を奪うために強く振るんじゃないの? 

ハードコンタクト。それがないから1、2点リードしても乗っていけない。相手はね、阪神が弱いなんて思ってないんですよ。でも強く振ってこないから全然怖くない。3連敗した中日戦はその象徴。全試合接戦に持ち込んだけど、最後はスイングの強さにやられて競り負けた。みんなもっと思い切り振れよ! ヤマ張ってでも荒々しく振りなさいよ! と言いたい。

投手陣も同じだ。ただ、こちらは援護が少ないから、慎重にならざるを得ないだろうね。おまけに守備が悪過ぎるから。打たせても人工芝でポロポロやるアマチュアレベルではね。キャンプから言っているが守りの悪いチームは優勝できない。野球は投手中心の守りで勝敗が8割が決まるんです。

鳥谷がスタメンを外れてから守備がガタガタ。おろそかにしてきたツケが出ている。中日の守備を見ました? 打ち取った打球は必ずアウトにする。12球団一の確実性がありますよ。でも阪神がこれほど打てず守れずなのに、なぜこの成績でいられるのか。投手陣の頑張りですよ。近年ずっとおんぶに抱っこ。でも守備の強化はシーズン中にできるほど簡単じゃない。相当な意識革命が必要ですよ。

次の目標はクライマックスシリーズ(CS)だなんて、低次元の話はやめましょう。首位から10ゲーム以上離されてCS行って、日本一目指すぞなんて常識的におかしいでしょ? 一発勝負だから借金を抱えた3位でも日本一になる可能性がある。じゃあ143試合のペナントレースはどうでもいいのか。このシステムだから、プロ野球全体、球団も選手も甘えた構造になる。今の阪神はそんなCSを目指すとか言ってる場合じゃない。打者が目の前の試合で必死に、荒々しく振ること。それは今からできる。それしかないじゃない。