ベテランの意地がチームに執念をもたらした。阪神鳥谷敬内野手(38)が「7番遊撃」で100日ぶりに先発出場。長い代打生活にも衰えを感じさせることなく、好守を連発。今季初のマルチ安打で得点にも絡んだ。延長12回の死闘の末に、DeNA戦を引き分けたが、鳥谷の奮闘はAクラス浮上を目指すチームにとって、明るい材料になった。

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黄色く染まった甲子園を鳥谷が熱くした。5回1死一塁の場面。7番鳥谷がDeNA上茶谷の2球目、141キロ直球をとらえた。打球が右前に抜ける間に、一塁走者の福留が激走。一気に三塁を陥れた。梅野の先制スクイズをお膳立てした。「準備は出来ていたんで…」。7回には左前打を放ち、今季初のマルチ安打をマークした。いずれも得点に絡んだ。延長12回の死闘で、ベテランのバットがチームに鼓舞した。

7番、ショート、鳥谷-。試合前の球場に響くアナウンス。先発メンバー発表に甲子園がドッと沸いた。実に4月14日中日戦(甲子園)以来となる100日ぶりの先発出場。契約最終年の今季は3カ月に及ぶ長い代打生活を送っていた。矢野監督はこの日の起用理由を説明した。「いろんなことはあるけど、常にトリのスタメンは頭の中から消したわけではない。自分の中でここやな、という判断の中で戻した」。主にルーキー木浪や北條を遊撃に置いているが、固定するには至っていない。そんな状況で、鳥谷の力を借りる時と判断した。

指揮官の決断に、ベテランも応えた。特に守備が際立っていた。初回1死一、二塁の場面。先発ガルシアがロペスに2ボールを与えると、すぐさまマウンドに駆け寄った。2回には先頭中井の二遊間への痛烈な当たりを横っ跳びでキャッチ。ベンチの矢野も思わず笑顔で拍手した。延長12回に入ってもショートを守り続け、4月13日以来、今季5度目のフル出場だ。

矢野阪神は大きく若返りを図っているが、やはりベテランの存在はチームに刺激を与える。「若い選手もそういう姿を見て、感じるものがすごくあったと思う。ベテランがみんな、背中で引っ張っていってくれたなと思う」。1軍復帰した福留とともにチームに勝負への執念を注入した。今季5試合目の引き分けとなったが、借金3を抱えリーグ4位の苦境であることに間違いない。経験豊富なベテランの力は必ず必要になる。【桝井聡】