ソフトバンクが92年西武以来、球団初となる3年連続日本一を達成した。「SMBC日本シリーズ2019」で巨人を4連勝で下し、ポストシーズン10連勝で頂点に立った。工藤公康監督(56)はポストシーズンで初めてベテラン内川をスタメンから外すなど日本シリーズでも「鬼采配」を見せた。2年連続V逸の悔しさを胸に、下克上を再現した。

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大きく両手を広げた工藤監督が連勝の数と同じ10度、東京ドームに舞った。負けたら終わりのCSファースト第2戦から10連勝で日本一まで突き抜けた。1発が出れば逆転サヨナラの場面、守護神の森が坂本勇を空振り三振に仕留めた。マウンドにできた歓喜の輪の中で、選手会長の柳田を見つけると真っ先に抱き合った。王球団会長、孫オーナーともがっちり握手。史上初の2年連続下克上で3年連続日本一をつかんだ。「本当に最高の気分です。ジャイアンツさん強かったですし、僕らが勝てたのはわずかな差だと思う」。一瞬の気も抜けない中での日本シリーズ4連勝だった。

「自分に後悔はしたくない」と、昨季以上に今季は短期決戦の鬼となった。第4戦は今季ポストシーズン11戦目で内川をスタメンから外した。交流戦で巨人菅野から本塁打を打った外野手の福田を一塁でスタメンさせた。早めの代打。セットアッパー甲斐野を回またぎ起用。8回の男モイネロを7回から投入するなど攻守で攻めの姿勢を貫いた。

15年から就任5年目。契約最終年の今季はリーグ優勝からの日本一しか考えていなかった。故障予防のために春季キャンプから厳しく走り込ませたが、故障者続出という皮肉な結果となった。福岡市内の自宅では、それぞれの選手の体に関するデータなどを管理。その量が増え過ぎ、引っ越しも考えたが、自宅マンションの別室をさらに借りて資料室とした。「もう1部屋借りてね。データはだいぶ出来てきたところはある」。1軍だけではなく、チーム全選手の特徴、状況を知っていたからこそ、若い選手を抜てきし、故障者の穴を埋めることができた。「高橋礼、大竹、(高橋)純平、甲斐野、椎野、松田遼。6人も新しい力が1軍に定着してくれたのは大きかった」とうれしそうに話す。野手でも周東、栗原、釜元、三森らを起用し、優勝争いを繰り広げた。

シーズン後半は故障明けのレギュラー陣を早めに復帰させたが、逆に失速。2年連続V逸となった。「選手のコンディショニングを…」と、睡眠時間を削って気にしていた。今年は就任以来、一番というくらい選手に声をかけた。気を使うあまりに、ある首脳陣が「監督が選手に負けてしまっている」と嘆く状況でもあった。選手に思いが届かない中でのV逸。翌日の仙台空港では憔悴(しょうすい)しきった表情だった。

「今年は何とかペナントを取りたかったが、僕の力不足もあって、優勝できなくて、本当に選手には苦労をかけた」。そう思うからこそ厳しさを前面に出した短期決戦でチームは「勝利」に向かって再びまとまった。「みんなで力を合わせて、強いチームをつくりたい」。6年目の指揮を執る来季こそリーグ優勝からの4年連続日本一を実現しなければならない。圧倒的な連勝の中から、来季へのヒントは見えた。工藤ホークスは短期決戦だけでなく、シーズンを通して最強軍団へと進化していく。【石橋隆雄】