甲子園の開場は1924年(大13)のことだった。「1球に酔う甲子園」と覚えたものだ。阪神高山俊外野手(26)が昨年、巨人相手に捉えた1球も大観衆を酔わせた。「代打・満塁・サヨナラ本塁打」。引き分けを目前にして「三段重(散弾銃?)」を打ち込んだと話している。

5月29日、伝統の一戦は4-4のまま、延長12回裏に入った。1死満塁で代打に指名されると、池田の3球目を右翼に運んだ。「よくとんだ打球が、とんでもない幕切れ」を招いた。プロ野球17人目、阪神では4人目の「代打満塁サヨナラ本塁打」になった。

ミスタータイガース藤村富美男は三段重に「逆転」を加えた。「代打・逆転・満塁・サヨナラ本塁打」。56年6月24日の広島戦だった。0-1の9回裏2死満塁で左翼へ本塁打した。藤村は当時、監督兼任。三塁コーチスボックスから打席に入ったという。「代打ワシ」と告げたのだろうか。自身最後の本塁打、通算224本目だった。

高山は昨年の5本を加えて、通算20本になった。藤村の十分の一にも届かない数。もっともっと甲子園を酔わせてもらいたい。「俊(旬?)のとき」を待ちたい。【米谷輝昭】