日本ハムで守護神、セットアッパーとして活躍した武田久投手(41)が、昨季限りで現役生活にピリオドを打った。

兼任コーチだった日本通運を退社し、今年からは日本製鉄東海REXで投手コーチを務めている。通算167セーブ、107ホールド。北海道移転後の黄金期を支えた同投手へ集まったファンの声、そして同投手の感謝の思い。日刊スポーツ北海道版の紙面上で、引退セレモニーを実施した。

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ひさしぶりの再会だった。選手ではなくなったが「動かないから食べなくなったよ」と、体形は何も変わらない。「遠投ならまだアイツらに負けない」。そう笑って選手たちを見る目は、幾分穏やかになったか。

若い投手の多い日本製鉄東海REX。武田コーチの元を、選手たちはダッシュで何度も駆け抜けていく。「走ることも大事だし否定はしないけど、ただ長い距離を走ることに意味あると思う? それってなんのための練習?」。瞬発系の動きを求められる野球というスポーツ。武田コーチの組むメニューは、すべて試合で結果を出すため、選手の将来のためを思って考えられている。

「筒香選手とか、ダルがいろいろ発信しているよね。言っていることは共感できる。野球界は遅れている」。過酷な練習環境や日程など、野球界に横たわる問題を武田久も憂慮していた。「こうやってコーチをやらせてもらえるのは選手がいるから。主役は選手。自分の思い通りにやらせるのがコーチではないよ。ひとりひとりにいい野球人生を送って欲しいし、1年でも長くやってほしい。そうなることが、自分もうれしい」。

取材中、武田久という選手とは? と聞くと、少し考えて「真っすぐ。かわす投球はしなかった」と答えた。コーチとなったいまも、野球に、選手に対して、真っすぐに向き合っている。【本間翼】