侍ジャパンが誇る韋駄天(いだてん)が、打撃もパワフルに大変身だ! ソフトバンク周東佑京内野手(24)が今季初の対外試合となるオリックスとのオープン戦(宮崎・清武)に1番二塁でスタメン出場。

1打席目から右越え三塁打、右越え3ラン、右前安打と快音を連発した。サイクル安打はならなかったが、5打数3安打3打点の大暴れ。昨年のプレミア12で快足で世界に衝撃を与えた男が、今年は打撃開眼で東京オリンピック(五輪)切符をたぐり寄せる。

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まるで別人だった。3回無死一、二塁。周東はオリックス荒西が投じた内角直球を完璧に捉えた。打球は右翼ジョーンズの頭上を軽々と越える先制3ラン。快足が自慢の男が、悠々とダイヤモンドを1周した。「オープン戦初戦から結果が出たのは良かった」。誇らしげに本塁を踏んだ姿に今季の意気込みが表れていた。

1番二塁でスタメン出場。1回からいきなり「周東劇場」が幕を開けた。3球目を引っ張ると、右翼ジョーンズも困惑して捕球できない強烈な打球で三塁打。メジャー通算282発の大物に、「(周東を含めて)体が大きくないバッターでもパワーのある打撃をしていた」と言わしめた。第3打席でも右前打を放ち、あと二塁打でサイクル。「めちゃめちゃ、意識しました。サイクル安打は経験ないんで」と声を弾ませた。

予感はあった。キャンプ初日から今季から1軍指導にあたっている金星根コーチングアドバイザーとマンツーマンで打撃向上に取り組んできた。韓国プロ野球で7球団の監督を務めた「コーチ」からのアドバイスは「下半身を使って、力を抜いてバットを振る」だった。「それを徹底しているうちに、軽く振っても打球が伸びるのを実感してきた。今季はこの打ち方をやり続けようと思っている」。森ヘッドコーチも「金さんと取り組んだことが初戦から出て良かった」と目尻を下げた。

昨シーズン、本塁打はわずか1本で、打率は1割9分6厘。「代走」で生きる道を見つけたが、打撃は散々な結果だった。今年の自主トレでは「昨年、ジャパンに入ったけど控えだった。チームでも控えである以上、メンバー入りは難しい。だからスタメンで出たいんです」と宣言していた。今キャンプ中、必ず一緒に二塁守備練習を行っていた牧原が22日に腰痛で別メニュー調整となった。レギュラー獲得して侍入りへ。東京五輪はプレミアから登録が4人減るだけに、貴重な1枠を得るには打力増が何よりのアピールになる。

工藤監督も「1番スタメンで思う存分に走ってもらおうと思ったけど、それ以上だったね。1番として積極的に打ってくれて、いい働きをしてくれた」と打撃開眼に驚いた。この日は二塁だけでなく、左翼も三塁もこなした周東。「どこでも守れるようにならないといけない。まだまだアピールしていきますよ」。もう「足」だけとは言わせない。打撃力アップで常勝軍団のレギュラーをつかみ、侍入りへの道も切り開く。【浦田由紀夫】

◆周東の昨年プレミア12 オープニングラウンドのプエルトリコ戦8回1死一塁、近藤の代走で出場。捕手からの好送球で1度はアウトが宣告されたがリプレー検証でセーフに覆った。スーパーラウンドのオーストラリア戦では、1点を追う7回無死一塁で代走に。6番浅村の5球目で二盗。2死となった8番源田の3球目、三盗を決めた。直後、源田の投前バントで同点のホームを踏み、逆転勝利の主役に。同ラウンド米国戦では1点を追う8回に代走で出場。次打者坂本勇の打席、2度のけん制後の4球目にスタートを切り盗塁成功。大会4個の盗塁は個人最多だった。