巨人から戦力外通告を受けていた吉川大幾内野手(28)が現役引退することを25日、表明した。現役続行の道を模索し、7日の合同トライアウトを受けたが、この日までにオファーはなく、決断を下した。「応援してくれた家族や友人の思いに応えられず、悔しいです」と唇をかんだが、母真規子さんから「健康で普通にやってくれるのが幸せ」と言われ、ケジメをつけた。

涙の4年間から、はい上がった。10年ドラフト2位で中日に入団。用意された背番号は立浪和義の「3」だった。期待とは裏腹に主に2軍生活。失策を繰り返し「3番返せ」とヤジが飛び、冷酷な視線が突き刺さった。ノックでは涙を流しながら、ボールに飛び込んだ。「悔しくて、悔しくて、死に物狂いで」プレーしたが、わずか4年で戦力外通告を受け、巨人に移籍した。

自らの価値を上げたのが、課題だったはずの守備だった。移籍1年目から主に守備固め、代走などで47試合に出場。同6月4日のオリックス戦では、1点リードの9回1死満塁で三塁線のゴロを好守で併殺を完成させ、お立ち台に上がった。「まさか守備でお立ち台に上がれるなんて。誰よりもノックを受けたし、中日の4年間があったから巨人での6年間がある」。

兄の影響で5歳から野球を始め、23年間のプレーヤー人生に別れを告げる。「寂しいです。(2歳の)長男がわかるまではやりたかったし、PL学園出身の選手が少なくなって、申し訳ない気持ちもあります」と話した。今後は巨人のスコアラーに転身する予定で「野球がめちゃめちゃ好きなんで、一生携わっていきたいです」と“生涯野球人”を誓った。