2位阪神が、逆転勝ちで巨人との首位攻防3連戦の初戦を制した。打線改造で臨んだ「伝統の一戦」。7回に同点に追い付き、なお2死満塁でプロ初の1番に起用された中野拓夢内野手(25)が走者一掃の勝ち越し三塁打を放った。中野の勝利打点は5度目で、12球団のルーキー最多。マイナス0・5ゲーム差で順位変動はないが、4日も勝てば首位奪回だ。宿敵を1週間で引きずり降ろす!

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ほぼ無風だった。中野がかち上げた打球が、右翼へフラフラと舞う。前進守備を敷いていた松原がポール際へ追いかける間、後押しするかのように甲子園の歓声が大きくなった。打球がフェンスへ直撃すると、ボルテージは最高潮。生還した小幡、大山、小野寺もバンザイ。ルーキーは三塁で右手を突き上げた。

「みなさん必死につないでくれた。フォアボール狙いという弱い気持ちではなく、ヒットで返そうと」

強気だった。3-3。同点に追いついた7回、なおも2死満塁。左サイドの大江をぶつけられた。過去2打数無安打の左腕に、直球で追い込まれフルカウントとなった。「ずっとスライダーを待っていた。真っすぐで追い込まれて、なんとか強い気持ちでいこう」。

狙いが決まっていたから、ボール気味の高めスライダーを仕留められた。「ファンのみなさんの声援のおかげであそこまで飛びました」。お立ち台では“援護”をもらった虎党に感謝しきりだった。

この回3人の救援をつぎ込んだ巨人執念の継投に、矢野監督は代打、代走4人を投入し一挙5得点で粉砕した。強気な采配はオーダーにも表れた。4試合、16打席連続ノーヒットだった中野をプロ初の1番に抜てき。今季全試合で1番の近本を3番、島田を今季初スタメンで2番に置いた。

矢野監督 いつも思い切り行けという気持ちで送り出している。打線の中でこれがいいんじゃないかと。

不調の中でも、指揮官の期待は変わらない。この日も3打席無安打で、直前には代打原口が倒れて重圧のかかる場面。それでも中野の意地が勝った。小さい頃から阪神ファン。印象に残る「伝統の一戦」には「今日がその日になった」とうなずいた。

首位攻防3連戦の初戦を取り、9月に入って2戦2勝。勝率で2厘及ばず2位のままだが、4日も勝てば8月28日以来、1週間ぶりの首位奪回だ。矢野監督は「本当に苦しい中で今日、初戦取れたのはすごく大きい。全員が絶好調という状態ではないけど、僕たちの野球ができた。明日以降も一丸でジャイアンツに向かっていきます」と力強く言った。相手先発は今季ここまで4戦全敗の左腕高橋。新人が生み出した勢いで、鬼門を打ち破る。【中野椋】

▼阪神は57勝42敗3分けで勝率5割7分6厘、巨人は52勝38敗13分けで5割7分8厘となり、勝率の差で阪神はまだ2位。貯金の数は巨人14に対し阪神は15あるため、巨人は阪神に「マイナス0・5差」の首位となった。阪神は4日○なら8月28日以来の首位に復帰する。

▼阪神の3点差逆転勝利は今季2度目。前回は7月12日DeNA戦で、0-3の9回に一挙4点を取ってサヨナラ勝ちした。巨人戦に限ると、19年5月29日に0-3から劣勢を挽回し、延長12回に高山が代打満塁サヨナラ本塁打して8-4で勝って以来2シーズンぶり。