阪神が6日から宿敵巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ(甲子園)に臨む。日刊スポーツ評論家陣による提言企画「かく戦え」の初回は、指揮官として広島に3連覇をもたらした緒方孝市氏(52=日刊スポーツ評論家)が同学年・矢野燿大監督率いる阪神にエールを送った。<1>ミスするな<2>1戦目1回が勝負<3>ラッキボーイ出でよ-。G倒へ「3つの指摘」。豊富な経験から短期決戦の酸いも甘いも味わい尽くした緒方氏の言葉がどう響くか。【構成=編集委員・高原寿夫】

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面白かったシーズンの決着がつき、いよいよクライマックスシリーズが始まる。短期決戦のポイントはいくつかあるが、間違いなく大事なのは失策、ミスをしないことだ。これは致命的になるからだ。阪神はこれが多いと指摘される部分かもしれない。

ミス、失策が起こる理由は2つ。1つは「想定外のミス」、もう1つは技術的、単純ミスだ。想定外というのは次に起こるプレーを想定しておらず、あわてて起こってしまうもの。準備不足とも言えるが、これはやはりしっかりいろいろな状況をシミュレーションして構えておくことだ。

技術的なミス、単純ミスを防ぐには反復練習しかない。それでも大事な試合の前には自分はよく選手に「足、動かしとけよ!」と言っていた。緊張するとどうしても体が硬くなる。すると最初の一歩が出遅れてしまう。だから普段以上に意識して体を揺さぶったり、小刻みに動かしたりする。基本だが、あらためて、そういうところを大事にするしかない。

それは当然として、まず巨人に勝つために重要になるのは、これはもう第1戦だろう。巨人先発の菅野をどう攻略するか。それも1回に、だ。過去の対戦経験から感じているのは、菅野は徐々に調子を上げてくるタイプということだ。1回からガンガン来たという記憶はほとんどない。どんな投手でもそうだが、特に“立ち上がり”に苦しむ方だと見ている。

従って重要になるのは1番打者だ。近本が復帰できるなら、それがベストだろう。得意の思い切りのいい打撃で甘い球を仕留めるのか、あるいは制球がよくないと見れば粘って次につなげていくのか。いずれにしても2番に入るであろう中野との1、2番コンビが菅野攻略のカギになるのではないか。

そのためには当然ながら1回表、巨人打線を無失点で抑えることだ。先発予想の左腕・高橋の立ち上がりも打線以上に重要になる。初戦1回の攻防で巨人との短期決戦の結果は決まると言ってもいいぐらいだ。

近本、中野の名前を出したが短期決戦にはラッキー・ボーイの誕生が重要だ。私が広島監督になって初優勝した16年は、DeNAとのCSファイナルステージで田中広輔が打ちまくった。4試合で12打数10安打、打率8割3分3厘でCSのMVPに輝いた。近本、中野の2人にそれに近い働きができれば言うことはないと思うのだが。

いずれにしても甲子園で戦う阪神に「地の利」はあるはず。巨人は百戦錬磨の原監督がさまざまな作戦を取ってくるだろうが、シーズンで勝ち越した自信を持って戦えば結果はついてくると予想する。