熱い思いと冷静な判断力が生きた。オリックス山本由伸投手(23)の勝負根性が凝縮されたプレーが勝負どころで飛び出した。

5回無死一塁、西武外崎のバント処理でマウンドから全速力で駆け降り、飛び込んだ。決死のダイビングキャッチ。背番号18が客席の全方向から見えるほどだった。

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「高め真っすぐのサインだったので、絶対(打球が)浮くだろうなと、準備できてました。もう(打球が)上がった瞬間、捕れそうだったんで…ヘッドスライディングしちゃいました」

無邪気に照れたが、試合を左右したビッグプレーが表すように、格別の思いで臨んでいた。自身初の開幕投手を務めた昨季は、同じ相手に敗戦。2年連続の大役で8回3安打無失点。最速156キロの直球を軸に、カーブやフォークを織り交ぜ、9奪三振。三塁を踏ませない圧巻の投球だった。

リベンジ成功。エースに涙は似合わない。「もう僕、だいぶ泣いてないですね。映画でウルっときたことはあるんですけど…。まだ、僕は泣けない」と昨季沢村賞に輝き、チームを25年ぶりのリーグVに導いても、歓喜の涙は封印中。ポツリと「最後に1つ、届かなかったので…」。今年こそ、日本一という頂に立つ-。そんな思いを胸に、今オフは午前5時に起床し、早起きで練習時間を確保。最後の最後まで勝ちきるため、努力を惜しまなかった。

これで昨季から自身シーズン16連勝。チームの開幕戦黒星を10年連続で止め、12年ぶりの初戦勝利をもたらした。中嶋監督は「最初の1勝は大きい」と喜び「危険なんで、あまりやってほしくないんですけどね…。でも、あの回(5回)で野手にも火がついた」とエースの闘志をたたえた。

山本も大きくうなずく。「チームにとっても、僕自身もすごく大きな1勝」。リーグ連覇&日本一へ-。勝負に泣かないエースが、頂点への感涙ドラマを生み出していく。【真柴健】