代役で乗り越えた! 広島は中日戦前に佐々岡監督と選手7人の新型コロナウイルス感染が判明し、離脱するアクシデントに見舞われた。感染した野間の代役で「1番右翼」で出場となった堂林翔太内野手(31)は8年ぶり2発を含む猛打賞。小園の代わりの矢野雅哉内野手(23)はプロ1号を放った。伏兵たちの活躍でコロナ禍を乗り越え、連敗は2でストップ。先発森下は10勝目を挙げ、チームは4位に浮上した。

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堂林が初球のファーストスイングでファンを、ナインを、首脳陣を安心させた。陽性判定を受けた野間に代わり「1番右翼」で出場。初回。中日の先発柳が投じた1球目、142キロをバットの真芯でとらえた。マツダスタジアムに歓声が沸く中、本塁打を確信。左中間席に伸びていく放物線を打席内で見送り、ゆっくりとダイヤモンド1周を始めた。「初球から積極的にと思って。最高の結果になった。ここ最近にない最高の当たりでした」。

4-0の5回には左翼ポール直撃の7号ソロを放った。中日立浪監督がリクエストし「手袋もヘルメットも全部つけて待ってました」。判定は変わらず。14年9月13日以来、8年ぶりの1試合2発を決めた。「コロナで何人か抜けたが、こういうときだからこそチーム一丸で戦いたい」。堂林は力強く誓った。

もう1人の代役もチームに勢いを与えた。小園に代わって出場した2年目の矢野だ。2回。1点を加えて2-0とし、なお1死二塁で柳のカットボールを右翼席最前列に運んだ。プロ3本目の安打がうれしい1号。「野球人生で2本目だった。入ったかどうか分からなかった。ボールどこやどこやと思って走ってました」。一塁塁審のジャッジを見て確信し、とびはねるように喜びながらダイヤモンドを1周した。

この日感染が判明したのは二遊間の菊池涼、小園に加え、野間、上本、矢崎、薮田、一岡の7人と佐々岡監督。チームスタッフ3人を加えると計11人が陽性となった。河田ヘッド兼外野守備走塁コーチが監督代行となり、「陽性になったものは仕方ない。明日からもまたやるだけ」と腹をくくって指揮を執った。4年ぶりAクラスを目指す広島にとって試練の夏も一丸となり、前へ進む。【前山慎治】

○…森下が球団日本人では99年紀藤以来の2戦連続完封で10勝目を挙げた。9安打を浴びながらも要所を締めた。「疲れました。絶対に勝つという気持ちで投げていた。10勝を目標にしていたのでなんとか届いて良かった」。明大の3学年上にあたる中日柳と通算4度目の投げ合いとなり、森下は3勝目となった。

▼森下が9日ヤクルト戦に続いての完封勝利。広島で2試合連続完封は16年に5月17日ヤクルト戦、24日巨人戦で記録したジョンソン以来。日本人投手では99年に5月26日巨人戦、6月2日ヤクルト戦で記録した紀藤以来23年ぶり。ちなみに、00年以降に現12球団で2試合連続完封した日本人投手がいなかったのは広島だけだった。

▼森下は新人だった20年以来、2年ぶりのシーズン10勝。広島で入団3年目までに2桁勝利を複数回記録したのは、新人から2年連続でマークした96年山内以来8人目。

○…2年目矢野は先輩たちからのゲキを胸にプロ1号につなげた。試合前にプロ11年目の菊池涼がコロナ感染発覚で離脱。オフに自主トレをともにした“師匠”から「思い切ってやれ」と言われた。12年目の秋山と16年目の会沢からは「結果どうこうよりもおまえは思いきってやれ。それ以外のことは俺らがやるから」と背中を押された。言葉通り1ボールからの第1ストライクを右翼席へ。河田監督代行は「2度とできないような素晴らしいスイング」と絶賛した。

○…河田監督代行は従来通り三塁ベースコーチも兼任した。「今まで通り、コーチャーズボックスに立つのが、選手たちも変わらずできていい。ルール違反でもないし」と、定位置に入った。8回2死満塁では矢野が放った三塁へのゴロで一塁のアウト判定を巡り、リクエスト。結果は失敗に終わったが、三塁ベースコーチがリクエストする珍しい光景だった。

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