また見たい! シビれる19歳の力投だった。

阪神ドラフト1位の森木大智投手(19)が堂々の1軍デビューを飾った。中日戦(バンテリンドーム)でプロ初登板初先発し、5回まで1安打無失点に抑えた。6回につかまり3失点で、球団初の高卒新人プロ初登板初勝利はかなわなかったが、大器の片りんを示した。今後は2軍で再調整する予定だが、矢野燿大監督(53)は今季中に再び先発で起用することを示唆した。

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6回を投げきった森木がベンチに戻る。その時、敵地ながら、称賛の拍手が沸き起こった。「歓声もすごかったですし、これがプロ野球だなと思いました。自分の中では楽しかったです」。6回3失点で、球団初の高卒新人プロ初登板初勝利は逃した。それでも、また1軍で見たい。そう思わせる91球。19歳の力投だった。

初回から落ち着き払い、プロ初登板には見えない投球だった。2番大島に初安打を許したが、動じない。「ある程度は想定していた。その中でゼロに抑えることだけ考えて投げ込みました」。この日は最速154キロを計測。119キロのカーブで緩急をつけ、申告敬遠をのぞけば、無四球と抜群の制球力だった。初回の阿部から5回の大野奨の空振り三振まで13人連続アウトで封じた。6回に力尽き、打者7人の攻撃で3点を失った。「詰めの甘さというか、勝負球が甘く入った」と唇をかんだが、「5回までは褒めていいかな」と胸を張った。

8月の1軍デビューは、「未来予想図」で描いていた。森木は気づいたことがあれば、ノートに書いて頭の中を整理。そこには1年の計画を月単位で練っている。「8月、9月には1軍に昇格して投げる」と力強く書いていた。「自分でも的中していて、ビックリしています。思ったより、想像以上に成長している。ファームで練習したものがいい方向にいっていると思う」。中学時代から体の仕組みを考え、投球フォームにもこだわってきた。右肘手術明けの才木が登板間隔を空けるために巡ってきたチャンス。日々の努力が力投を生んだ。

矢野監督は「大したもんだよね。初登板で自分の投球で打者に向かっていく本当に素晴らしいものを見せてもらった」とたたえた。29日にも出場選手登録を抹消する予定。今後は2軍で再調整となるが、指揮官は今季中に再び先発することを示唆した。「あの投球なら、ファンの人も俺も森木を見たい。ローテーションのどこかでチャンスは十分にある。それを楽しみにしています」。

森木も次回登板までのレベルアップを誓った。「毎登板進化していけるように、今はしっかりやっていきたいなと思います。次は勝ちを取れるようにやっていきたい」。入団会見で目標に掲げた「世界一の投手」。その夢に向かって、力強く第1歩を踏み締めた。【三宅ひとみ】

▼阪神でドラフト入団した高卒新人では、13年藤浪晋太郎以来の初登板初先発。プロ初登板が先発だったのは4人いたが、中日戦での初登板初先発は初めて。

▼今季の高卒新人投手では1軍デビュー一番乗り。野手ではロッテ松川が開幕スタメンでデビューしている。

▽阪神福原投手コーチ(森木について)「めちゃめちゃよかったと思う。6回に点は取られましたけど、本当にすごいピッチングをしてくれた。マウンドでもすごく落ち着いていた。想像以上の僕もビックリするようなピッチングでした」

▼阪神は今季の長期ロードを10勝14敗の借金4で終えた。長期ロードは3年連続の負け越しで、矢野政権になった19年以降は1度も勝ち越しなし。

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