ヤクルト村上宗隆内野手(22)が、02年松井秀喜以来の日本選手50号を放った。20年前のその時、マウンドで松井とオール直球の好勝負を演じたのが元ヤクルト投手の五十嵐亮太氏(43=野球解説者)だ。村上とも現役最後の2年間はチームメート。50号に縁が深い元剛球右腕が、その“価値”を語った。【取材・構成=大池和幸】

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村上選手の打撃はシーズンの中でも良くなってますね。内角をけっこう厳しく攻められている。それでも打撃を崩すことがない。自分の打つべき球を待っている。そして何よりミスショットが少ない。選球眼がいいから、四球も多い。こうなるとじれて、打撃を崩すケースも多い。でも崩れていない。本塁打王を他の選手と争っているとなると、焦りが出るでしょうけど、今のところ本塁打王はほぼ確実。そういう意味では焦る必要もないし、いい材料になっているのかなと。

松井さん以来の50号ですか。あの勝負、覚えていますよ。(6球)すべて真っすぐを投げました。当時は巨人の優勝が決まっていた。残りも1試合で、松井さんはアメリカに行くかもしれなかった。個人的には真っすぐで勝負したかった。最後は外角球でしたが、レフトへライナー性の打球。松井さんも、落合(博満)さんもだけど、反対方向に強い打球を打てないと、50本やその先の領域にはいけないのかなと思う。村上選手も逆方向への長打が以前より増えていますしね。

松井さんも村上選手も素晴らしい打者。自分は投手なので技術的な2人の比較は難しいですが、今年の村上選手の50号はとても価値が高いと感じています。ノーヒットノーランが5人も出たり、投手のレベルが明らかに上がっている。それはトラックマンだったり、情報量によるものも大きい。そして相手から徹底的に研究されての50号だから、やっぱり価値がある。だって先日の通算150号の(年少)記録、あの王さんより速いんですから。

今の村上選手を抑えるのは難しい。自分が勝負するならやっぱりアウトローかな。内角といってもホームベースから少し離れて立っているし、のけぞるように意識させても動じない。今、対戦している投手からすれば、ホームランだけは避けて、ヒットならOKみたいな感じじゃないかな。自分が松井さんと対戦した時も同じ。そんな打者は松井さんの他にいなかった。

もちろん村上選手におめでとう、なんですが、彼はまだ先を見ていると思う。松井さんの時より残り試合が多いし、55、60本と打ってもらいたい。19年からの2年間、一緒にプレーしました。印象は見た目通りですよ。プライベートではやや若々しさがあったけど、試合の時の切り替えは見事だった。今回の50号も含め、これだけ打てている要素には、素直さもあると感じています。

◆巨人松井の50号VTR 02年10月10日ヤクルト戦(東京ドーム)で達成。第1打席に藤井から49号先制2ランを放ち、50号に王手。4-3の8回には五十嵐亮と対決し、カウント1-2からの打球は真上に。しかし、捕手米野が目測を誤ってフライを捕れずファウルに。仕切り直しの5球目はライナーで左中間へ運ぶ50号。東京ドームでのシーズン最終戦で2発打ち、日本人選手では86年ロッテ落合以来の50号に到達した。