出られなかった鬱憤(うっぷん)。完全には拭い切れない再発の不安を必死に封じ込めながら、バットに魂を宿した。度重なる右太もも裏肉離れから1軍復帰の西武金子侑司外野手(32)が、苦しむ打線につながりをもたらした。昇格即「1番左翼」で出場。4打数2安打で好機を演出した。

3回。第2打席は先頭打者で巡ってきた。「本当に緊張してた。何とか前に飛ばそう」。フルカウントからの7球目、145キロ直球に振り負けない。打球は中堅のわずか先を抜けて右中間への三塁打となった。

この一打が9月のチーム打率1割6分と不振だった打線につながりを与えた。続く源田が右中間へ適時三塁打。さらに森が中犠飛。効率よく2点が追加された。金子は5回にも左前打を放ち、4打席で22球を投げさせたのも価値があった。10日昼に昇格を伝えられ、松井ヘッドコーチからも直接電話で「頼むぞ」と起爆剤になることを期待され、それに応えた。

負の連鎖の始まりは5月20日。一塁を駆け抜けた時、右太もも裏を肉離れ。2カ月以上のリハビリを経て、1度は8月2日に1軍復帰も、その試合の8回の内野安打で再発。激痛を隠し、交代を申告しなかったのは「情けなさすぎて…」。わずか1日で逆戻り。またもどかしい日々が始まった。

「またやるかもしれない」。恐怖心がゼロとは言えない。だが試合に出る以上は関係ない。「万全だと思ってもらって大丈夫。本当はずっと活躍したかったですけど、何とか最後だけでも力に」。残り13試合の決戦。出られなかった時がある分、強い覚悟の金子が帰ってきた。【上田悠太】

▽西武辻監督(金子の活躍について)「なんかうれしくなってくるよね。源田がまた生き生きなったし」

○…中村が先制の11号ソロを放った。2回先頭。バックスクリーン左に運び、史上18人目の通算1300打点にも到達。ベンチでは「よっしゃ」と感情を出した。「思うようなゲームができていなかった。先制本塁打を打てて、今日はよかった」。前日10日も9回に同点打を放った。打線が低調の中、21年目のベテランがひときわ頼もしい。

○…与座はお立ち台で大粒の涙を流した。5回を4安打3四球も無失点。今季は9勝から3度足踏みしたが、自身初の2桁勝利に到達した。18年にトミー・ジョン手術など育成落ちも経験したサブマリン右腕は「本当にファンの皆さんの声援が力になっています。まだ終わりじゃない。次に向けて全力で頑張ります」と言葉に詰まりながら、さらなる活躍を誓った。

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