ヤクルトが強い。球団史上初のリーグ3連覇を目指し、初の開幕5連勝で勢いに乗った。チーム打率は1割9分7厘とリーグ5位だが、安打以外の要素を絡め「過去、現在、未来」の侍3世代が打線をつなぎ、総合力で勝利をもぎ取った。投げては世界一に輝いた侍ジャパンの高橋奎二投手(25)が5回4安打4奪三振無失点と好投。投手陣も開幕5戦で4完封勝利と、43年名古屋以来2度目のタイ記録となった。

四球、犠打、盗塁、適時打、長打、好守、好投-。ヤクルトナインは野球の全てを表現して、完勝した。打たずしても打線をつなぐ。その哲学を06、09年WBC連覇の「元侍」2番青木が体現する。

初スタメンの丸山和が初回先頭で左前打と二盗で無死二塁とし、青木が際どいコースを抜群の選球眼で四球を選ぶ。「結果的に良いフォアボールなった。ボール球は振らない。ストライクをしっかりと振る。常にその意識を持って打席に立っている」。

続く3、4番が「侍ジャパン」の山田、村上という超強打者だけに「彼らの前でチャンスをつくることは大事」と頭にあるのは安打だけではない。その2人が連続四球を選び、押し出しで先制。決勝点となった。どんな方法でも得点できる燕打線を見せつけた。

「未来の侍候補」も連動した。6回1死二塁で長岡が右翼線に適時二塁打。15打席目にして今季初安打となった。捕手が本職の右翼・内山は守備で見せる。2回1死二塁、高橋周の右翼への安打性の当たりをダイビングキャッチ。先発高橋が「あれが抜けていたら大きかった」と感謝した。

3回には青木の好守もチームを救った。2死二塁で大島が放った左前打に突っ込もうとするも、間に合わないと判断。急ブレーキをかけてワンバウンドで捕球した後、中継プレーに切り替える。青木-長岡-中村とつながり、二塁走者の柳を刺した。その「現役侍」中村の好リードで開幕5試合でわずか2失点という鉄壁の守備を作り出している。

走攻守全てで隙を見せず、派手な長打がなくとも勝利をもぎ取る。「高津野球」が開幕5試合にして早くも機能し始めた。それでも「今はうまく回ってるからいいですけど、まだまだ注文したいところはありますよ。まだ100点じゃない」と高津監督。球団初の開幕5連勝でも求めるレベルはさらに高い。3連覇への道のりが厳しいことを知っているからだ。【三須一紀】