広島新井貴浩監督(46)は穏やかな笑みを浮かべながら、栗林良吏投手(26)のもとへゆっくり歩いた。

9回裏。守護神は先頭から3連打を食らい、2点差に迫られていた。なおも無死一、二塁。動揺を隠せない守護神の腰に手を置き、冷静に、熱い言葉を伝えた。

「おまえで打たれたら本望だから。思い切って腕を振ってこい」

3点リードの9回裏、栗林を投入した。守護神は試合前時点で今季阪神戦2戦2敗。2日前の18日には逆転サヨナラ打を浴びていた。それでも迷わず送り出した。ピンチを招いても、信頼は一切揺るがなかった。

「彼の野球に対する向き合い方だったり…。彼が背負っているものを自分はすごく感じているので、正直な気持ちを伝えた」

現役時代は広島、阪神で主軸を張り続けた。「チームの顔」の重圧を人一倍知る男だから、覚悟を決められた。就任後初めてマウンドに向かった直後、栗林は後続2人で3アウトを奪った。「新井さんの言葉でいい意味で開き直れた。もうやるしかない、という気持ちになれた」。そう感謝した右腕を「それは彼の力でしょう」とねぎらった。

選手を信じ抜いた末の3連敗阻止だ。1回表に2点を先制しながら、先発アンダーソンが2回8安打4失点と大誤算。逆転のきっかけは悩める男の一打だった。2点を追う4回無死一塁、15打席連続無安打でも変わらずスタメン起用した6番デビッドソンの左前打からチャンスを拡大。代打松山の逆転3点二塁打を呼び込んだ。

救援陣は3回以降の6イニングを無失点リレー。信じた新助っ人が、守護神が信頼に応えてくれた。指揮官3試合目での甲子園初星。何より内容に納得顔だ。

「普通にうれしい。選手から3連敗だけは絶対にしないという気迫が伝わってきた。まさにチーム一丸の勝利。今日の勝ちはチームを成長させると思う」

4位ながら首位に0・5ゲーム差まで肉薄。新井カープが再び上昇気流に乗りそうな気配だ。【佐井陽介】

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