4番の「一振り」ならぬ「二振り」が負の連鎖を断った。DeNA牧秀悟内野手(25)が、広島戦(横浜)で決勝の逆転8号3ランを放った。1回にも7号2ランを打っており、今季自身初の1試合2発。いずれも劣勢の展開をひっくり返した。チームの連敗は6で止まった。

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それぞれが役割を果たして回してくれた絶好機に、主砲・牧の血が騒いだ。「4番の仕事をするにはここしかないと思って、強い気持ちで打席に入りました」。1点を追う8回1死一、三塁、広島九里の136キロを強振した。好調のバロメーターでもある、逆方向に伸びたライナーは右翼席に到達。力強くこぶしを振り下ろしながら走った。

勝負どころと皆が分かっていた。先頭の佐野は前日もこの日も無安打。だが8球粘って四球を選び、ほえた。6番から今季初の2番に上がった関根は犠打を成功。宮崎の三塁への強い打球は敵失を誘った。三浦監督は「勝負しました。逆転のランナーを出した。全員で準備した」と、佐野と宮崎に代走を送った。ベンチ全員の思いが牧の打球に乗った。

4月は球団記録となる16勝を積み上げながら、月が変わって急ブレーキ。前夜は今季初の6連敗を喫した。0-7から終盤5点を追い上げ、最終回も走者を出したが、届かなかった。牧は「負け方が負け方だった。点が取れなかったり、打てなかったり。ただ長いシーズンやっていればこういうこともあると、先輩たちにも言われていた。何か変えるより、今できることを全員でやろう」。ベンチでの明るさも、打席での強気も「いつも通り」で機を待った。

WBCから戻り、序盤は打席数も少なく、早出練習で振り込みを続けた。ようやく、自分らしいスイングができてきた実感がある。田代コーチと試行錯誤し「その日の悪いところをひと言で助言してくれる。結果を出して恩返しじゃないですけど、認められるように頑張ります」と言った。

1点を先行された1回2死二塁でもバックスクリーン右へ2ランを運び、1試合の中で2度、逆転弾をマーク。試合直後の三浦監督いわく「ロッカー、みんなだいぶ騒いでました」。4番のバットが、歓喜をもたらした。【鎌田良美】

▼牧が21年9月30日ヤクルト戦以来2度目の1試合2本塁打。この日は1回が逆転2ラン、8回が逆転3ラン。牧の本塁打は今季8本だが、1号逆転、2号先制、3号逆転、6号勝ち越し、7号逆転、8号逆転と、6本が肩書付きでそのうち4本が逆転弾。今季、両リーグで逆転弾を2本以上打っているのは牧だけで、肩書付きの殊勲アーチ6本も両リーグで最も多い。