ソフトバンク和田毅投手(42)が、母親の実家がある山形の地で躍動した。

今季最長の6回を3安打1失点にまとめて3勝目。地方球場での登板は10年以来だったが、13年ぶりでも好相性は変わらず、通算7戦4勝1敗とした。NPB通算2000投球回まであと残り2イニング。チームもダイエー時代を含め得意の山形開催7連勝で連敗を2で止め、首位オリックスに1・5ゲーム差に接近した。

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ベテラン左腕が“地方の鬼”と化した。今季最長6回のマウンドに和田が仁王立ちした。「余力はあった」。リズム良く2死を奪い、最後は主砲浅村を内角スライダーで三ゴロに仕留めた。81球を投げ、3回以降はノーヒット投球でわずか1四球。抜群の安定感だった。「回を追うごとに乗ってきた。3回くらいから納得のいく投球ができてきた」とうなずいた。6回3安打1失点の快投。地方球場は13年ぶりだったが、プロ通算7試合で4勝1敗と、好相性を存分に発揮した。

縁のある地で勇姿を届けたかった。母親の実家が、山形・鶴岡市にある。少年時代は夏休みの帰省で遊びに行った記憶は今でも鮮明だ。「たくさん親戚が集まったりしていた。家の中に入ってくるオニヤンマを捕まえたり、アブを退治したり」と懐かしそうに笑った。

そんな思い入れのある山形はプロ21年目の42歳にして初登板。親戚も現地応援にかけつけていた。試合後はお立ち台にも呼ばれ、声をかけ合った。「母親の故郷で投げられるなんて夢にも思っていなかった。ウイニングボールはおばあちゃんの家に送りたい」。野球の神様が用意してくれた舞台で、最高の恩返しができた。

チームにとっても山形開催は得意中の得意で7連勝。ダイエー時代の91年から始まった連勝街道。同年の8月21日の日本ハム戦では藤本博史監督(59)が2戦連発を放つ大活躍だった。そんな指揮官も、引き分けを含む連敗を2で止めた左腕を高評価。「よかったよ。悪いなりにベテランだから投げてくれた」と熟練の投球術にホレ直した。

ベテラン左腕の次なる勲章が、目前に迫った。NPB通算2000投球回到達まで残り2イニングだ。「もちろん次(の登板)で決めないと。今日の姿をまたマウンドで示していけるように」。山形でもらったパワーを胸に、レジェンドがさらなる高みを目指す。【佐藤究】

■91年 ダイエー藤本2戦2発

◆91年山形でのダイエー藤本博史 8月20日の日本ハム戦は1点リードの5回に渡真利の2ランのあと5番藤本が適時三塁打で追加点。9回には8号ソロを放ってダメを押した。翌21日の同戦でも4回に先制ソロ。7回にラガの21号ソロも飛び出し、吉田がプロ初完封を飾った。この2連戦の藤本は7打数3安打2本塁打3打点の活躍だった。