長いトンネルを抜けた! 阪神佐藤輝明内野手(24)が、自己最長ブランクの95打席ぶり弾で勝利を呼び込んだ。「日本生命セ・パ交流戦」のソフトバンク戦で1点リードの6回、左腕和田から右翼へ9号2ラン。「フォークの神様」として一時代を築き、阪神監督も務めた杉下茂氏が97歳で亡くなったことが伝えられた日に、復活アーチを天国にささげた。2位DeNAが敗れ、ゲーム差は再び4に拡大。輝のお目覚めで一気の進撃といきたい。

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初夏の甲子園に花火を打ち上げた。佐藤輝は一塁ベースを蹴ると、小さく右手で合図した。打球は今オフに自主トレをともにした右翼柳田の頭の上を通過。「最高の気分ですね」。今季最多4万2631人が入った甲子園はもう、フェスさながらの大熱狂だった。

6回、原口の適時打で1点を勝ち越した直後だ。2死二塁、フルカウントから和田の内角131キロをさばいた。「追い込まれていたので、なんとかして前に飛ばそうと」。必死だった。肘をたたみ、バットを体の内側から繰り出す。技ありの一振りで右翼席へ95打席ぶりのアーチを描いた。

「早く打ちたいとは思っていましたけど、焦ってもいいことない。しばらく間が空いてたので、ここからどんどん打っていきたい」 スタメン復帰した14日オリックス戦から3試合連続安打と上昇ムード。この日はアニメソングと野球観戦を楽しむイベント「トラフェス」の一環で、登場曲を変更した。今季初めてももいろクローバーZの楽曲「『Z』の誓い」を採用し、復活ショーを彩った。約1カ月に及んだ94打席連続ノーアーチは自己最長ブランクだったが、ももクロの力も借りて打ち破った。

今月12日に97歳で死去していたことが分かった元監督の杉下茂さんをしのび、試合前には佐藤輝らナインが黙とうをささげた。岡田監督は「前の03年の時とかは、キャンプも来てたからな。俺がまだコーチの時な。あれからあんまり外では会ってないなあ」と惜しんだ。阪神投手陣も指導を受けたことがある。「フォークボールという武器があったから、うん」。指揮官も、虎に財産をもたらした故人を思った。先人がいて今がある。佐藤輝らナインの奮闘で、同じタテジマを着た大先輩に白星を届けた。

9回に守護神湯浅が2被弾で逆転を許した悪夢の一戦から一夜明け、ベテラン和田を打ち崩して勝った。13年から交流戦で9開催連続で勝ち越しがなく、虎が一番苦手にしているソフトバンクに、まずは先勝。「3つ勝ちます!」。お立ち台で宣言した佐藤輝の言葉を現実にする。【中野椋】

◆阪神時代の杉下氏 投手コーチ時代には、エースの村山実や進境著しい外国人のバッキーを徹底指導。チーム防御率は2年連続リーグ1位の投手王国を築いた。とりわけ実績のなかったバッキーには「失敗しても、必ずそこから何かを学べ」と諭し、29勝で最多勝と沢村賞を取るまでに育て上げた。監督としては途中退任したものの、チームは最終3位。村山は24勝で最多勝に輝いた。

▼阪神はソフトバンク3連戦に先勝。交流戦このカードは通算27勝35敗4分けで8つの借金と、対戦別ワースト。13年の対戦から昨年まで9開催連続勝ち越しがなし(20年は交流戦中止)と、苦戦が続いていた。

▼阪神は交流戦終了時点のリーグ首位が決まった。2位DeNAが交流戦残り3試合で全勝しても、36勝25敗1分けで勝率5割9分。阪神は2連敗でも38勝24敗2分けで6割1分3厘となり、DeNAを上回るため。阪神が交流戦閉幕時点でリーグ首位は、05、08、21年に続き4度目。

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