<ロッテ7-6西武>◇6日◇東京ドーム
ロッテ安田尚憲内野手(24)の打球は、誰もがサヨナラ打と確信するような鋭さで、センターへ低く飛んでいった。
延長10回2死二、三塁。黒く染まるロッテファンが瞬時に狂喜乱舞する東京ドームで、中堅を守る西武岸潤一郎外野手(26)はあきらめていなかった。
「もう、その場の感覚というか。それしかない。あそこ以外ないと」
猛然とチャージし、ワンバウンドで打球をキャッチ。勢いのままに全力で投げた。一塁へ。
「最後にアウト取るとしたら、もうあそこしかないと思って。狙ってはいました」
一塁手はベースから離れていた。そもそも、安田も緩めず走っていたから、タイミングもセーフだった。でも、何があるか分からない。岸は「センターゴロ」を狙っていた。
明徳義塾(高知)では好投手としても鳴らした。寮生活をしたくて、兵庫県から越境入学した。
「でも、入学が決まって初めて行った時に『いや、やっば…』と思って。ほんと、大変でしたね」
甲子園常連校ゆえの厳しさに耐えながら、しかし、勝つ野球をとことん身に染みこませた3年間でもあった。
各地で高校野球地方大会が始まった。7月に入って、現役の高校3年生球児への思いを聞いた時、こう言っていた。
「甲子園目指しての3年間、最後の最後まで諦めずに。せっかく、3年間やってきたと思うので」
言葉だけじゃない。奇跡は起きなかったけれど、岸潤一郎はプレーで示した。【金子真仁】