西武のドラフト2位ルーキー、古川雄大外野手(19)が“兄ちゃん超え”を心から願っている。

弟の拓海外野手(3年)が母校の佐伯鶴城(大分)で、昨夏の自身と同じ背番号8を付けてプレーしている。頑張れ-。いつもは若獅子寮で朝7時過ぎに起床するけれど、14日は6時前に目覚ましをかけた。

「僕も去年経験して、初戦、めちゃめちゃ緊張したんですよ。夏の大会は何があるか分からないっていう状況で、めちゃめちゃ緊張したのを覚えてて、弟も緊張しとるかなと思って」

だから、起きた。朝6時過ぎに「集大成の夏になるんだから、緊張せずに思い切って行け」と送った。弟や後輩たちは無事に初戦を制し、次は18日に試合を控えている。

16日、兄は3軍戦が終わり、泥だけのユニホームで取材に応じてくれた。入団当初、不慣れな木製バットでは、なかなか強く打球を捉えられなかった。

「疲れすぎて逆に寝られない、みたいなこともありました」

タフな毎日。それから半年。野球漬けの日々を送り、明らかに変わった。

「体重も5キロ増えて、90キロくらいになって。筋肉量が増えて打球も強くなってきて。半年間で力はついてきたと思います」

熱い夏から1年が過ぎた。憧れの世界に入って、少しでっかくなって、いま思う。

「プロ野球でほぼ毎日試合してるので、負けても『あぁ今日負けた』って感じてしまう時もありますけど『負けたら高校野球が終わる』『ここで終わりや』ってなった時の必死さが、やっぱり高校の夏は全然違ったなと。あの気持ちは忘れないようにやっていかなきゃいけないです」

大事なことをあらためて教えてくれた、弟や後輩たち。「全員で1点をもぎ取りに行く野球が鶴城だと思うので、それをやり続けて、勝ち続けて、自分たちがベスト4で終わった中で、かなえられなかった甲子園出場の夢をかなえてほしいです」。心からの思いが、言葉の抑揚にしみ出る。

15日は3軍戦の後、泥だらけで特打に励んだ。16日も気温37度の所沢で3軍戦をこなした。「今日はもう終わりなので」。笑顔で対応してくれた。毎日ヘトヘトなのに、朝6時前に誰かのために起きられるのが、古川雄大だ。

「自分、弟、好きなんで」

白い歯がまぶしかった。【金子真仁】