プロ22年目を過ごす西武栗山巧外野手(39)にとって、今年初めてのヒーローインタビューだった。

「初めてなんすよ~」

着替えて帰路へ向かう表情にも幸福感があふれる。ひと言ひと言しっかりと。明るく優しく強く伝える。左翼席を中心に西武ファンもわいていた。

「千葉はライオンズファンもけっこう詰めかけてくれて盛り上がる球場なんで、うれしかったです。次いつ(お立ち台に)立てるか分からへんから、しっかりファンの皆さんに気持ち届けたいなと思って」

プロ初先発のロッテ菊地から安打を放った。栗山が公式戦で安打を放ったのは、これで通算513人目になる。

「あまりこう、初先発とかルーキーの選手とかは気にしないようにして、しっかりボールの勢いとタイミングだけを図れたらなと思って試合に臨みました」

やることはいつも同じ。誰よりも先にベンチに入り、バットを2本並べ、ヘルメットやグラブも丁寧に置く。毎試合そうする。

打撃フォームに微調整を加えることはあるものの、意識までは変えない。いつもと同じことを、しっかりと。5回にはロッテ東妻から中押し5号2ランを放った。公式戦で本塁打を打った相手としては通算107人目になる。

9月には40歳になる。それでもしっかり打つ。しっかり走る。「そこそこ芯に当たったんで」という本塁打の場面も、一塁を全力疾走で回った。頭を越されることを想定したロッテ右翼岡が、走塁を緩ませようと、捕球体勢に見せかけるフェイントをしたからだ。

しかし打球はライトオーバーどころか、フェンス直撃どころか、フェンスオーバーに。

「ウソや~ん、って。あんな余裕で捕られる勢いじゃないのにって。でもマリンの風に戻されることも経験してはいるので、あぁ…と思いながら」

それだけにうれしい5号弾。チームではマキノン、中村、外崎に続く4位だ。不惑が近づいても、バットマンはまだまだ元気だ。

「本当に、皆さんの応援の力はいただいています。僕たちもしっかり頑張って、いい力を皆さんに感じてもらえるように頑張りますんで、応援よろしくお願いします」

汗吹き出る中で声をからした獅子党たち。その心のど真ん中にぶっ刺さりそうな、背番号1の言葉と声色だった。【金子真仁】

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