もう、アレへ一直線や! 阪神がヤクルトに競り勝ち、07年以来16年ぶりの10連勝を飾った。2位広島とのゲーム差を8に広げ、17年ぶりの貯金24で今季最多を更新した。1点を追う3回、約1カ月ぶりにスタメン起用された5番小野寺暖外野手(25)の2点打で逆転。先発の伊藤将司投手(27)が5回3失点で粘り、救援陣が無失点リレーを決めた。ただ、試合後には5回に死球で途中交代した梅野隆太郎捕手(32)の左尺骨骨折と今季絶望が判明。ショッキングな事実をチーム一丸で乗り切る。

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しぶとい。小野寺はバットを体の内側から出した。「腕が震えていました」。プレッシャーをはねのけ、右前に落とした。3回、逆転の2点適時打。伏兵がプロ初のV打を決め、07年以来、チーム16年ぶりの10連勝に導いた。

「9連勝で1度も活躍することなくきていたので、ここで打ってヒーローになってやろう、と」

1点ビハインドの1死満塁だった。左腕山野の132キロカットボールを仕留めた。「5番左翼」で自身約1カ月ぶり、今季6度目のスタメン出場。スタメン時の適時打はプロ初だ。チャンスを一振りでものにし、岡田監督の起用に応えた。

前夜の悔しさをぶつけた。今季12球団最長となった5時間16分の激闘中、延長11回にミスを犯していた。1死一塁でスリーバントに失敗。サヨナラ劇にも簡単には笑えなかった。

「何もせずに足を引っ張るだけだった。昨日のミスを取り返したい気持ちが大きかったので」

一夜明け、自主トレをともにする「師匠」でもある4番大山の後ろで快音を響かせた。何があっても諦めない。ど根性を持つ男は簡単には折れない。

大商大時代もそうだった。ここで打たないとスタメンを外される-。そんな場面でよく打った。ドラフト前、居酒屋で酒を飲んで感情が高ぶり、「プロ野球選手になるねん!」と大泣きしたこともある。7回には右前打で今季2度目のマルチ安打。ハングリー精神をぶつけ、打席数は少ないが打率3割7分9厘だ。

前日12日は昼間に2軍戦に出場し3打数3安打。ナイターの1軍にハシゴする「親子ゲーム」で深夜まで球場にいた。この日も恒例の早出特打を敢行。「試合に出てないので体力は大丈夫」と笑い、無尽蔵のスタミナで夏を乗り切る。

岡田監督も「打つ方は調子がいいと思っていた」とノイジーの代役を信じていた。梅野骨折離脱という悲しい知らせが届く中、2位広島とのゲーム差を「8」まで広げた。お立ち台で「バモス!」と叫んだ背番号60の一撃で、貯金は今季最多を更新する「24」。マツダスタジアムに乗り込んで迎える15日、さあ、優勝マジック29点灯だ。【中野椋】

▼阪神は15日の広島戦に勝てば、優勝へのマジック29が点灯する。16日以降に広島が37試合に全勝しても、最終成績は92勝48敗3分けで勝率6割5分7厘。阪神は広島との残り9試合に全敗しても、他球団との29試合に全勝すれば92勝47敗4分けで6割6分2厘となり。広島を上回るため。