シーズン最後の最後、西武の愛斗外野手(26)が再び存在感を出し始めた。

3試合連続でスタメン出場。3回にロッテ美馬からチーム初安打を放つと、7回にはロッテ沢村の外角152キロに負けず、ベルーナドームの左中間最深部へ放り込んだ。愛斗は言う。

「あそこに打てたのが一番いいっすね。おとといの左中間(二塁打)も。僕の状態がいい時に出る打球方向です」

開幕スタメンで本塁打を放った。春先は1番右翼に定着し、単打に近い数の二塁打を打った。抜群の打球反応を誇る右翼守備で、何度も投手を救った。惜しくも捕れない時は感情をむき出しにし、それもまた投手たちを奮い立たせた。

しかし打撃が崩れ始めた。安打が出ない。打順が下がる。スタメンが減る。2軍に落ちた。

「数字として結果が出なくなると、いろいろな人がアドバイスをくれるじゃないですか。それをいろいろ聞いて、自分の中で考えすぎちゃったというか。自分自身が崩れちゃったら意味ないんですよね」

また1軍に戻ったのに調子はどうしても戻らない。春は1番打者を張ったのに3軍も経験した。悔しさを募らせながら、それでも球場に早く来た。

当確ゼロで始まった外野手争い。蛭間、長谷川、鈴木、岸、西川らも間違いなく攻守に成長を見せたが、最後まで絶対的レギュラーを勝ち取る選手は現れず、秋になった。60試合以上で外野守備についたのは、この日を終えて愛斗と鈴木だけ。定位置確保はそう簡単なことではない。

激しいアピール合戦の中で、愛斗の3度目のチャンスはシーズン最後になってようやく訪れた。

何かを変えなくては-。9月12日、ソフトバンク戦(ベルーナドーム)。出場はなかった。ベンチで試合を見ていて気づく。

「ずっと近藤さんと柳町の打ち方を見ていて、あれ…? って」

とある技術面の気付き。ベンチ裏でそれらを参考に素振りする。たまたまその姿を中村剛也内野手(40)が目撃した。

「おまえ、そうやって打て」

「わかりました、やってみます」

そこから3試合連続安打に、この日は大きな4号ソロ。どんどん振るスタイルで、前日までは今季234打席で四球は申告敬遠の2つのみだった。それがこの日の最終打席では粘って四球を選んだ。チームが14個も空振り三振したのに、1日2三振、3三振もままあった愛斗が、一番しつこく食らいついた。

「申告敬遠2つで、今日が(選んだのは)今季初めて。とにかく1個…」

好結果で打席での気負いも減っている。好循環を得て、あとは「自分の言葉にできるようにしたいです」と、この先の揺るがぬ道しるべにできるよう、しっかり考える毎日だ。

役に立ちたいから、役に立てないことが悔しい。センターを守ったこの日、3回のピンチはベンチ指示で左中間寄りに。うまく打った中村奨の打球は右中間寄りに流れ、遠くから果敢に追いかけたが「最後、手を巻き込まれてしまって」と惜しくも捕球しきれず。「平良にはゴメンって言いました」と唇をかむプレーになった。

シーズンはあと15試合で終わる。「まだ2、3試合続いただけなので。最後までこのままできたら」。優勝はなくなった。もがき苦しんだ末の成果で、せめて最後に。全て出て、全て力になりたい-。外にメラメラを見せるタイプではなくとも、愛斗は確かに燃えている。【金子真仁】

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