“辰己劇場”でCSへ! 楽天辰己涼介外野手(26)が、決勝犠飛で、首位オリックスからの逆転勝利に導いた。前半戦は不振にあえいだが、前向きに、真摯(しんし)に野球に取り組み続け、状態は上向きに。激しいCS争いの中で、勝負強さを発揮した。チームは3位に再浮上。2位ソフトバンクに0・5差へと詰め寄った。Aクラス固めと、本拠地仙台でのCS開催へ向けて、結果にこだわっていく。

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楽天には簡単には笑わない男がいる。ただ真顔になればなるほど、この男は真骨頂を発揮する。

同点で迎えた8回無死満塁。緊迫した場面でも、辰己は切迫していない。1-1から、阿部の外角134キロスプリットを右腕1本でスイング。打球を右翼まで運んだ。盛り上がるベンチとスタンドとは裏腹に、表情を変えずに淡々とベンチへと戻る。「1点入ればいいかなと。気楽な場面で回していただいた。この右腕でプロの世界まで駆け上がってきた。しっかり治療をしたい。右腕に追いつけるように左腕も頑張ってもらいたい」と真顔で自分で自分の体にエールを送った。

予想のつかない言動は“辰己劇場”としてファンに親しまれる。チームを3位に押し上げたが、無安打に終わったことを反省。「個人事業主としては最悪な日になりました」。クラブハウスに引き揚げる直前の通路で嘆く。喜ばしいのに、人と違う感情が支配する。

昨季は不動の中堅手として試合に出続けたが、開幕直後は不振。5月には打率は1割5分前後まで落ち込み、先発落ちしたり、2軍調整を経験した。「つらいとは思っていなかった。ネガティブなことを言ってくる人はいっぱいいますけど、そういうのに引っ張られないように。打ち方はもう自信持ってやってきたので」と胸を張る。毎試合同行してくれる家族とも、会話の内容はほとんど野球のこと。24時間、野球のことを考え続けてきた。

7月のオフは、DeNAバウアーと食事をした。話す言葉も、育ってきた環境も違う。だが「中3日で150球投げるのをやってみたい」と話すサイ・ヤング賞右腕のように、ともに不思議キャラとして沸かせる選手同士。会食のきっかけや会話内容は「秘密です」と多くは語らなかったが、同じテーブルを囲み、刺激をもらった。「僕自身いい結果で終わると思っている」と信じ続けて夏場以降、状態は上向き。打率はリーグ11位の2割6分4厘へと持ち直してきた。

リーグ戦も最終盤。「ここからは結果を出すしかない。見栄えのいい数字に上げられるように頑張ります」と貪欲に結果を追い求めていく。仙台でCSを-。その合言葉を現実にする原動力となる。【湯本勝大】

 

<辰己真顔言動アラカルト>

◆「僕が出ていた方が華があると思う。息子の歯が生え始めてむずむずしている。チームもむずむずしているんですけど、しっかり歯が生えて、きれいな歯並びになると思う。信じてついてきてください」(4月23日のヒーローインタビューで)

◆「そんなことはどうでも良くて、母校が甲子園行ったんですよ。それが一番うれしいですね。あとは弟の辰見鴻之介が支配下なったんで、その2点が力になりました。以上です」(7月27日、プロ初の4安打も母校・社高の甲子園出場と、血縁関係がない同じ“タツミ”の後輩を喜ぶ)

◆「試合前に新庄監督に『よお、天才バッター』と声をかけられたので、自信がつきました」(9月23日に2本の適時打を放ち)

 

▽楽天石井監督(7投手を起用して勝利)「序盤に少し不安定な中で、内がしっかり3回を締めてくれたのが非常に大きかった。ブルペンが早めにスタンバイしてくれた。チームが逆転して、松井に渡せて良かった」

▽楽天小深田(28歳の誕生日に3安打1盗塁)「いい誕生日になりました。(盗塁王へ向けて)追いついて、追い越して、チャンスがあれば走っていきたい」

 

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