ロッテの名物アナウンス担当、谷保恵美さん(57)が公式戦最後のアナウンスを終えた。

この日が通算2100試合担当の節目に。今季限りでの卒業を決めた“球界の歌姫”の人柄を、現西武担当記者がつづる。

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帯広界隈をドライブしながら、どこまでも広がる十勝の農地の写真をツイッター(現X)に投稿した。

割とすぐにスマホがピロリンと鳴った。路肩に止める。誰だろうと思ったら、谷保さんから。

「写真、きれいですね。十勝の子どもたちはいつもあんな景色を見てるから、すくすく素直に育つんですよ(笑い)」

そんな谷保さんもすくすくな十勝のお人。帯広の中心で菓子問屋を営む家に生まれ育った。

歌姫、と書いた。「ザ・ベストテン世代なんです」と笑う。小学生の時から地元の少年少女合唱団でソプラノを担当。コンクールが近づくと、弟に徹底したスパルタ教育を施し、家でのハモり練習に夜な夜な付き合わさせた。

高校野球の監督だった亡き父の影響で、野球も好き。壁紙だけは女子っぽい部屋になぜか硬球が転がり、本棚は野球ものがずらり。夏の甲子園の期間は居間のテレビを占領し、菓子をつまみながら1日中スコアブック。当然怒られた。

地元帯広でいえば、レーズンバターサンドで知られる「六花亭」のホットケーキが大好きで、おすすめの場所は植物由来のモール泉で知られる十勝川温泉。それに「帯広の空港から飛び立つ時の、畑がパッチワークみたいに見える景色が大好きなんです」。

縁あって上京し、憧れの職についた。「まぁ長くやってると、いろいろありますよね」。つらいことがあっても、大好きなK-POPを鼻歌で奏でながら完走した。武蔵野線が強風で止まり、出勤できるか冷や汗が流れた日もあった。

2100試合でのアナウンス担当より、自分をほめたいと言った1894試合連続担当。「コロナ、心配ですよね。かかるわけにいかないんです。こういうお仕事なので、皆さんにご迷惑やご心配をおかけしちゃう」。プレッシャーを誰にも見せず、高いプロ意識で責任を全うした。

札幌にいた短大時代、この仕事に就きたくて雑誌「週刊ベースボール」に載っていた球団事務所の電話番号に片っ端から電話した。30数年を経て、同じ週刊ベースボールで4ページのインタビューを受けて野球人生を締めるのも、なんだか粋な話だ。

宴席では「なかじめ~~」と発声を任されることもあったおちゃめな谷保さん。これからいい感じに年月が過ぎて、いつかマリンのネット裏の1番高い場所から試合を眺めるのも夢なんだと話す。

先日の日刊スポーツの記事では「やりたいことが」と書いてあった。そうやって前を向いて卒業していく姿が、かっこいい。

「来年はエスコンで合流しましょう。ぜひ北海道でおいしいもの食べましょう!!」

来年の春、何をなさっているんですか、谷保さん。とりあえず私はここ数年はセイコーマート専門になっているので「かんぱ~~い」できる外食のお店、探しておきます。【20~22年ロッテ担当=金子真仁】