ロッテがミラクルを起こした。劇的な逆転サヨナラでソフトバンクに勝ち、CSファーストステージを突破した。

延長10回に救援陣が崩れ、3失点し、万事休すかと思われた。だがその裏にドラマが待っていた。無死一、二塁、今季1本塁打の藤岡裕大内野手(30)が右中間に起死回生の同点3ラン。最後は2死一塁から安田尚憲内野手(24)が右中間を破る適時二塁打を放った。対戦成績を2勝1敗としたロッテが、オリックスとのファイナルステージ(18日開幕、京セラドーム大阪)進出を決めた。

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藤岡の目は真っ赤だった。「最高でしたね。最高の形で点を取ることができて、最高の形でチームに貢献できた。今日は本当に自分も褒めたい」。10回裏、先頭の代打角中が中前打で出塁、荻野が三塁前にボテボテながら執念の三塁内野安打。無死一、二塁で藤岡。ソフトバンク津森の初球を積極的にスイング。甘く入った148キロの直球を右中間に運んだ。

3点ビハインドにも諦める気持ちはみじんもなかった。「集中していてあまり覚えていない」。角中が出塁した時に「まだいける」の仲間の声が耳にようやく届くほど。押せ押せムードを感じ、背中も押された。「初球に絶対まっすぐが来ると信じて、絶対に振ろうと思った。良い角度で上がったのでいってくれるだろうと信じていた」。藤岡は一塁を回ると、喜びをかみしめるように右拳を握った。ベンチにいた仲間も総立ち。大声援を送り続けてきた2万9000人を超える大観衆も総立ち。「声援が力になり、スタンドまで届かせてくれたと思う」と感謝した。「ONE TEAM」で戦ってきたロッテの23年。吉井監督、選手、スタッフ、ファンが文字どおり1つになった証しだ。

昨季はケガの影響もあり、試合に出場出来ない日々が続いた。吉井監督も4日に1度くらいは“休養日”を設け、友杉との併用でアシストしてくれた。「今年は絶対に成績残すって気持ちでやっていた。なんとか2位になれたことも大きかった」。キャンプから最後まで残ってケガ防止の筋力トレーニング。マッサージしてくれるトレーナーにも感謝。いつも最後に球場を引きあげるのは藤岡だった。

今季はオリックスに大きく負け越し、山本にはノーヒットノーランまで食らった悔しさを晴らす舞台をつかんだ。「自分たちはチャレンジャー。失うものはない。良い投手がたくさんいるが、少ないチャンスをものにして、相手より1点でも多くとっているように」。勝利を呼ぶ一打をいま放ち、リーグ3連覇の王者撃破に勢いは加速した。【鎌田直秀】

【動画】打たれたSB津森は頭をかきむしる…ロッテ藤岡裕大が延長10回裏起死回生の同点3ラン!