オリックス東晃平投手(23)はかみしめるように勝利の儀式を楽しんだ。「後半はもう気持ちでという感じでした。守備にも助けていただき、粘り強く最少失点で投げ切れました」。

また球団史に名を刻んだ。育成出身として初の日本シリーズ先発勝利。球団初のデビュー7連勝でリーグ3連覇に貢献した雑草右腕が大舞台でも輝いた。

「すげえ…」。1軍の甲子園は初めてで雰囲気に驚いたが「結構楽しめました。打者と勝負していたら、そんなに聞こえなかった」と平常心を貫けた。2回は1点先制されたが二塁ゴンザレスの好守に助けられた。多彩な変化球をコーナーに配して5回1失点。5回無失点のCSファイナルステージ・ロッテ戦に続き、大きな1勝を導いた。

兵庫県出身だが神戸弘陵(兵庫)では甲子園と無縁だった。エースを任された2年夏は大炎上で2回戦敗退。3年夏も腰痛の影響で不完全燃焼。エリートとは言いがたい存在だった。育成契約で入ったプロでも故障がち。入団3年後に支配下選手として契約されない場合は、自由契約になるが、4年目も契約更新。そこから変わった。先輩、後輩関係なく質問し、練習方法から精神面まで改善に努めた。

今年の開幕後、転機があった。小林2軍監督からシュートするツーシームの本格習得を勧められた。1度は捨てた球種だったが、素直に受け入れた。自分のものにすると一気に投球の幅が広がった。そうしてたどり着いた夢の日本シリーズ。「ホッとしています。この経験はなかなかできないので、つなげたいです」と無敗男は充実感に浸った。 東をはじめ、多くの泥くさいサクセスストーリーで形づくられた、オリックスは今年も強い。【柏原誠】

▼プロ6年目の東がシリーズ初登板初勝利。公式戦の東は通算14試合に登板して7勝0敗。公式戦無敗の投手がシリーズで白星を挙げるのは、新人の12年<6>戦高木京(巨人=公式戦2勝0敗)来日1年目の15年<2>戦バンデンハーク(ソフトバンク=同9勝0敗)に次ぎ3人目で、先発勝利はバンデンハークに次いで2人目。過去の2人はNPB在籍1年目で、2年以上在籍した公式戦無敗の投手が勝ったのは初めてだ。また、育成ドラフト出身投手の白星は22年<4>戦宇田川(オリックス)以来7人目。育成ドラフト出身でシリーズ初登板初勝利は11年<5>戦山田(ソフトバンク=先発)17年<2>戦石川(ソフトバンク=救援)に次いで3人目。

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