血染めの粘投だ。阪神才木浩人投手(24)が初の日本シリーズで持ち味を貫いた。初回は3者凡退の立ち上がりだったが、2回に親指から出血。「マメではなくて、ひっかきました」。拭ったユニホームの太もも付近には血がにじんでいた。それでも、マウンドでは一切弱みを見せない。1点リードの5回2死三塁では4番頓宮を151キロ直球で一邪飛。固く拳を握り、5回5安打1失点で粘投を締めた。

「シンプルに、まとまりが悪い日だった。その中でしっかり球数使いながら、粘りながらいけました」

5回95球と球数がかさんだが「今日は粘る日だな!」と割り切って投げた。右肘のトミー・ジョン手術から復帰した、昨年7月の復活星から約1年。育成経験者では球団初となった日本シリーズ先発で、堂々たる投球だ。

今季、甲子園では8試合で防御率1・33。「傾斜、マウンドの感じもすごく好き。真っすぐとかフォークの感触も1番いい」と最も得意にする球場だ。自ら「自分フライピー(ピッチャー)なんで」と語る才木。ホップする直球に、打者はボールの下をたたくフライが上がりやすい。それだけに、広く浜風が吹く甲子園は味方になるという。「打たせても風で戻ってきたりする。思い切っていけるところが大きい」。得意な聖地が投球を後押ししている。

先発陣には10勝左腕の大竹も控える中、前倒しで第4戦先発に抜てきされた。岡田監督も「役割を果たしてくれましたね」と評価。超満員の聖地で、期待に応える好投だった。【波部俊之介】