「シン・アニキ」は主砲にお任せあれ! 阪神大山悠輔内野手(29)が10日、くら寿司スタジアム堺で糸原、小野寺との合同自主トレを公開した。今年初の屋外フリー打撃中には後輩小野寺に金言を授け、大飛球に導く場面もあった。新年早々から背中でナインを引っ張る覚悟を熱弁し、リーダーの風格たっぷりの4番。球団史上初のリーグ2連覇へ、金本知憲、福留孝介、鳥谷敬らが継承してきた精神的支柱の系譜に新たな歴史を刻みにかかる。

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気温7℃。小雨が降りしきる寒空の下、打撃ケージの真横だけホットな空間に様変わりした。屋外フリー打撃の途中、大山がそっと小野寺に近づく。目の前でスイングを実演すると、後輩は直後に柵越えを決めて満面の笑みだ。地面と平行に近かった体重移動に縦の動きを意識させて改良に成功。小野寺は「長距離打者は打球の角度が1番なので。1番タメになる」とただただ助言に感謝した。

糸原と3人での合同自主トレは2年連続。全身から湧き出る熱気から終始、リーダーとしての覚悟がにじみ出た。年始早々から1時間近くも谷川打撃投手のボールを打ち続けて「去年も結構早い時期からやっていたので」とサラリ。24年の目標を問われると「チームの連覇だけです。そう簡単にできるものではないので」と表情を引き締めた。

昨季、チームは18年ぶりのリーグ制覇、38年ぶりの日本一を成し遂げた。圧倒的王者としてマークされる1年。さらにチーム力を上げるため、主砲は今まで以上に身を粉にする。打率2割8分8厘、19本塁打、78打点で最高出塁率のタイトルも獲得した昨季の成績を「納得していない」、自身の課題を「きりがないぐらい、いっぱいある」と表現。走攻守はもちろん、「まずは私生活から」背中で引っ張るつもりだ。

「そういう立場、年齢にもなってきた。そういう姿を見て後輩に何かプラスになってくれればいい。見られることで自分もより気を引き締められる。油断やスキは見せたくない」

強い虎には常に精神的支柱が存在した。ドラフト1位入団時の金本知憲監督は現役時代、骨折してもグラウンドに立つ心と実績、面倒見の良さでアニキと呼ばれた。近年も福留孝介や鳥谷敬がその姿勢で仲間を引っ張ってきた。先人たちのスタイルを懸命に見習ってきた大山は今、伝統を継ぐにふさわしい立場にある。

昨季は全143試合で4番を守り抜いた。今季は球団では掛布雅之、金本知憲以来3人目の複数シーズン全試合4番の期待もかかるが、本人は相も変わらず冷静だ。「真ん中の打順になることが多い」と自覚した上で、2年連続全試合4番については「そういうことはいいです。連覇したい。それしか考えてないです」と強調。24年も昨季同様、チームの浮沈を全身で背負い抜く。【佐井陽介】

▼大山は22年から、159試合連続で阪神の先発4番打者を務めている。今季141試合目まで続ければ、プロ野球史上過去9人しかいない連続300試合に到達する。なおDeNA牧は現在200試合連続を継続中で、大山より早く大台に届く可能性がある。阪神で全試合スタメン4番を複数シーズンで達成したのは、掛布雅之3度(82~83、85年)金本知憲6度(04~09年)の2人。大山は3人目を目指す。