ブルペンの1レーンが静寂に包まれた。ヤクルトのサイスニード投手(31)は、狩場のごとく、息を潜めた。他の投手が投げるたびにうなる中で「声を出すキャラではない」。ナタを振り下ろすように、右腕がしなった。直球、スライダー、チェンジアップ、カットボール、ナックルカーブの全球種を42球。球審をどかし、大塚ブルペン捕手と1対1で向き合った。「自分のストライクゾーンを意識して、そこの確認で投げたかった」。こだわりを詰め、ミットに照準を定めた。

「生まれながらだよ」のハンター。オフも野生に身を置いた。夫人のハンナさんの出身地・アラスカで、2日をかけて約100キロの熊、6日をかけて250キロ前後のヘラジカをハント。熊はスパイスを混ぜ、ソーセージに。ヘラジカはステーキなどで平らげ、命に感謝した。「めちゃうまいよ。においもない」と流ちょうな日本語で笑った。

将来的には、ジビエ料理店の開業も夢見る右腕。今回のハンティングでは1日に10時間の耐久戦もあったという。狩った鹿を兄と担ぎながら、急斜面を10キロ歩いた。「野球に通じる。体力、忍耐力がつく」。セ界にうごめく“獲物”は虎、コイ、星、ウサギ(?)、そして竜。「どのチームもハントしていくことが必要」と、えり好みはしない。

モンスターハンターより、リアルが好きな狩人。来日4年目のシーズンが始まる。「開幕投手に選ばれれば光栄。ただ、監督から言われたところで投げるというのが自分の仕事」。これまで危険な目に遭ったことは? 「サイスニードの方が危険だよ」。狙った獲物は逃さない。【栗田尚樹】

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