巨人の「新風打線」が猛虎を圧倒した。23日の阪神とのオープン戦開幕戦(那覇)で、阿部慎之助監督(44)が白星発進した。1回に打者12人で7安打を集めて一挙7点を先制。6単打1長打に四球、犠打、相手失策を絡めて打線が連なった。指揮官が掲げる「勝利のための自己犠牲」がチーム内に徐々に浸透。7回にも2点をダメ押し、本拠地・東京ドームで迎える3月29日の開幕前哨戦を制した。

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威勢良くとか、思い切り良くとか、無心でとかじゃない。巨人の若手中心で構成された「新風打線」が、阪神伊藤将を不敵にのみ込んだ。阿部監督は「みんなボールを長く見て、粘り強くいってくれていた。そういうのも徹底してシーズン通してやっていこうと言ってある。いい攻撃が初回にできて良かったと思います」と、約30分に及んだ立ち上がりの猛攻を評価した。

3安打の先頭松原が斬り込んだ。1回無死、2球を見逃して2ストライクと追い込まれるも動じることなく、平行カウントからの131キロカットボールを中前にクリーンヒット。オコエは追い込まれてから4球ファウルで粘って四球を選びつないだ。門脇が初球に犠打を決めて1死二、三塁。岡本和の右前適時打で理想的な先制点を奪った。

7安打に相手失策も絡み、1回だけで7得点。単打、四球、犠打、長打に足も使い、伝言リレーのように意思を共有した打線がつながった。前日22日には「信号無視をしない暴走族をつくっていこうかなと。ブンブンうるさいけど、ちゃんと信号守っている。そういう暴走族をね」と独特の表現で走塁意識の重要性を強調したばかり。「点を取るのが野球。打つばっかじゃ難しいので、足も絡めた」とグラウンドにサインを送り、用兵を巧みに操った。

通例にとらわれない斬新な戦法も包み隠さずに披露した。伊藤将には、ここ2シーズンは1勝5敗、54回8得点、防御率1・33と天敵となっていた。前日に予告した通り、相手左腕に対しスタメンで6人の左打者を並べた。「いい材料にはなったかなと思います」と本番でも左腕対左打者のデータをアップデートした。

オープン戦初戦の白星に大きな意味は持たせず、新風打線の完成形はもっと高みに置く。成長途上の秋広は1安打1打点も、佐藤輝に1発を浴びた直後の3回の打席で初球を簡単に打ち上げた姿勢を「1本打って満足しちゃったのか。ああいうのは野球知らないんじゃないかと思います」と厳しく指摘。守備も門脇、湯浅、中田の3失策に「普通にやるというのが一番難しいこと。取れるアウトを取れなかったりすると致命的になる」と隙は許さない。

阿部監督はソックスを上げるオールドスタイルで、ベンチからタクトを振るった。自己満足よりも自己犠牲を、華麗な野球よりも、勝つ野球を。明確なポリシーをチームに浸透させていく。【為田聡史】

◆新風 巨人の今季スローガンは「新風~GIANTS CHALLENGE~」。失敗を恐れずに挑戦し、新しい風を吹き込むとの決意が込められている。

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