中日大野雄大投手(35)が、復活の白星を手にした。5回4安打1失点と安定した投球。左肘手術を乗り越え、チームを昨年4月1日以来の勝率5割に引き上げた。

沢村賞左腕の粘りの投球だった。3回1死まで完全投球。だが2点リードの4回に1点を許し、5回も先頭から連打で無死一、二塁とピンチを背負った。そこからがエースの真骨頂だった。吉川、代打・長野、萩尾を直球、ツーシーム、カットボールを駆使して打ち取った。ファンも大野の名前入りのタオルを掲げ、大声援で左腕を支えた。「引退試合かと思いました」。そんな冗談を言いながらも、22年9月25日巨人戦(バンテリンドーム)以来の勝利をかみしめた。

昨年4月4日ヤクルト戦で先発後、左肘の軟骨除去手術に踏みきった。1年間をリハビリに費やし、開幕ローテーションに帰ってきた。シーズン幕開けの3月29日の神宮。試合前ミーティングで、立浪監督は「投手は攻めの気持ちを1年間忘れずにやっていこう」と告げた。その言葉が、大野の胸に響いた。「ピンチになってもそういう気持ちでいようと思っていた」と、66球に心を込めた。21年秋、就任直後の立浪監督は翌年の開幕投手を託してくれた。指揮官の思いに今年こそ報いようと、懸命に左腕を振った。

19年から22年までの4年間、対巨人戦は20試合9勝6敗、防御率は1・46。巨人キラーの復活1勝はやはり巨人から。最下位からの反攻をにらむ指揮官は「(大野は)もっともっと良くなってくる。チームの柱としてやってもらいたい」と期待する。大野も「これで5割に戻った。チームがどんどん乗っていけたら」と呼応する。立浪ドラゴンズに、大きな柱が戻ってきた。【伊東大介】