敗戦の光ダーン! 阪神森下翔太外野手(23)が、リーグトップタイの3号で連日満員札止めの甲子園を熱狂させた。6番に降格したが0-6の劣勢にも集中力を研ぎ澄ませ、4回に広島先発アドゥワから左翼へ弾丸アーチ。昨季10本塁打だった中距離砲が今季は39発の量産ペースだ。チームは再び借金生活に戻ったが、背番号1がマルチ安打で示した反発力は意地の象徴。今夜はスカッと快勝して六甲おろしを歌いたい。

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森下は迷いなく振り切った。アドゥワの直球をガツン。ドジャース大谷ばりの時速175キロの弾丸と化して、大歓声に後押しされるように左翼席に飛び込んだ。大谷の今季最速アーチは172キロ。甲子園のトラックマンが示した驚異の数字でその豪打ぶりがよく分かる。0-6の一方的展開から、甲子園の夜空に今季初めてかかったアーチに、ファンは酔いしれた。

「とらえた感触もよかったし、しっかり自分のスイングができました。自分に求められているのは初球からガツガツいけるのと、ああいうところで本塁打を打てるところだと思う」

8月1日に開場100周年を迎える本拠地甲子園。3月31日の巨人戦で放った今季のチーム1号も森下。聖地でのチーム1号も森下だった。完敗で“空砲”となったが、若武者の成長は希望の光だ。トータル10本塁打だった昨季に対し、開幕11試合で早くも3本。リーグ最多タイで、年間39本ペース。決して、まぐれではない。

試合前の練習で、バットを握り、感覚を研ぎ澄ます。現在、主に使うバットは2種類。テープを巻いたグリップの厚みが違う。その差はなんと「0・6ミリくらいです」。この日、フィットしたのは黄色いテープを巻いた細めの1本。「スイングの感覚と、打球の感覚も含めて、決めています」。体調も考慮しながら選ぶ。豪快なイメージが強いが、どこまでも繊細。自分の体と技術をよく分かっている。

本塁打以上に強烈だったのは第1打席の二塁打かもしれない。2回先頭。低空ライナーが左翼を襲い、名手秋山が一瞬前に出ようとしたほど。打球はその頭上を高速で越えていった。今季初めての「6番」。打率が上がらず、3番から降格となったが、破格の能力をあらためて示した。

手先でバット操作してしまう悪癖を直すため、体幹を意識して振る新フォームを染みこませてきた。キャンプではなかなか打球が上がらず、岡田監督をやきもきさせたが、なじむにつれて角度もついてきた。頼もしい一振りに、指揮官の表情も緩んだ。

勝てば今季初の貯金生活だったが投打がかみ合わず、1日で借金生活に逆戻り。なかなか波に乗れなくても、悲観する状況ではない。「まだ明日勝てばカードを勝ち越せる。明日に向けて準備したいです」。背番号1が、大きな背中を伸ばして言った。【柏原誠】

【動画】阪神森下翔太が甲子園100周年イヤー第1号!打球速度175キロ 岡田監督もニヤリ