踏ん張った! 阪神が5連勝中の首位中日を相手に今季初の引き分けをもぎ取った。先発青柳晃洋投手(30)が7回2失点と力投。7回まで散発2安打に抑え込まれていた打線は8回、1番近本光司外野手(29)が執念の2点内野安打を奪い、試合を振り出しに戻した。18年以来6年ぶりとなるバンテリンドームでのシーズン初戦勝利はならずも、総力戦で価値あるドロー。13日こそ岡田彰布監督(66)に虎指揮官歴代2位タイの484勝目を贈る。

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近本は集中力を高めていた。2点を追う8回2死二、三塁。そのバットに全ての期待がかかっていた。12球粘って出塁した糸原。代打ノイジーの大飛球。木浪の好走塁…。それらを演出したベンチワーク。チーム全体で作った大チャンスを逃すわけにいかなかった。

「粘り強くつないだチャンスだったので、どんな形でもなんとか1本という気持ちでした」

勝野の快速球にバットを出しながら粘った。「直球にしっかり入っていって、変化球にどう対応するかだった」。6球目。空振りを奪いに来た落ち球を一、二塁間最深部に転がした。全速力で紙一重のセーフをもぎ取り、二塁手田中の送球がそれる間に、二塁から代走小幡も生還した。

敗色ムードの8回に起死回生の2得点。一塁を駆け抜けると、息をはずませながら三塁側ベンチに向かって両手を上げ、喜びを分かち合った。あわや見殺しだった先発青柳の負けも消した。

打線は長いトンネルをようやく抜けた。10日広島戦(甲子園)の6回以来、20イニングぶりの得点だった。その前の7回の攻撃前には円陣も組んだ。全員が必死でホームを目指した。「小幡がしっかり帰ってきてくれて同点になったのは大きかったと思います」。近本はそう振り返った。

開幕からレギュラー陣の調子が上がらず、得点力不足を招いている。その中で不動の1番打者として安定した働きを続ける。9日の甲子園開幕戦(対広島)では決勝二塁打。この日は初回に柳から11球も粘った。2連敗後の引き分けで連敗は止められなかったが、近本はプレーでチームを引っ張っている。

岡田監督の球団監督歴代2位タイとなる484勝も、3試合連続で足踏みとなった。それでもベンチ入り野手では「第3捕手」の長坂以外を使い切る総力戦で、執念の引き分けをもぎ取った。「まあ、今日の試合は今日で。しっかり追いついたのがよかったんじゃないですか」と近本。虎の意地が詰まった延長12回ドロー劇だった。【柏原誠】

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