今月17日のAKB総選挙の沖縄でのパブリックビューイング会場で取材をし、総選挙の醍醐味(だいごみ)を感じ取ることができました。

 雨、卒業発表、結婚宣言などいろいろありましたが、今回、取材で訪れて最も印象に残ったのは、アイドルとファンの距離感についてでした。今年の総選挙は、大雨の影響で前日16日に開票イベントの開催中止が発表されるなど大混乱の中、開催されました。

 沖縄に来てしまったファンの取材をするために那覇空港にいると、HKT48田中菜津美(16)のファン一行に会い、話を聞きました。田中は、劇場などではMC力などで人気のメンバーですが、これまで5回出馬した総選挙では、80位にランクインしたことがありません。

 ファンたちの平均年齢は高めです。40代は越えていると思われます。今年こそは、何とかランクインさせようと熱を入れてきたといいます。何故そこまでするのかと質問すると、まるで娘のことを語るように「いつ、卒業するか分からない。卒業するまでに(ランクインという)箔(はく)を付けてあげたい。大勢の観衆の前で名前を呼ばれてステージに立たせてあげたいんです」と明かしてくれました。

 翌日、急きょ、開設されたパブリックビューイングの会場に行くと、朝8時から並んで最前列に一団が陣取っていました。横断幕を掲げ、明らかに他のファンたちとの温度が違います。今年にかける思いがひしひしと伝わってきます。

 田中の目標は65位。ファンたちは70位くらいには入れるんじゃないかと手応えを感じていたそうです。しかし、65位を越えても名前は呼ばれません。どんどんと順位が上がっていきます。ファンたちの顔もどんどん余裕がなくなってきて、祈るように画面を見つめています。何と、結果は50位。ファンたちは弾けるように歓喜し、喜びを分かち合いました。

 結局、「大勢の観衆の前で名前を呼ばれてステージに立たせてあげたいんです」という願いはかないませんでしたが、来年、総選挙が行われたらあらためてチャレンジすることになるのでしょう。

 田中の選挙公約は「ファンのみなさんと(総選挙の)打ち上げをしたい」というものでした。ファンの思いを感じての公約なのでしょう。

 欅坂46の握手会で24日夜、発煙筒がたかれた事件がありました。一方で、同じ日、田中は握手会で大勢のファンらと記念撮影をしていました。大きなニュースにはならないかもしれませんが、そんなドラマも総選挙ではありました。