戦後80年を迎え、戦争を題材にした映画が相次いで公開されている。今作は、8月9日に原爆が投下された長崎で、救護の最前線に立たされた看護学生3人を軸に、葛藤を抱えながら戦争の悲惨な現実、人の生死に直面した人々を描いた。

17歳の田中スミは空襲で看護学校が休校になり、学友の大野アツ子と岩永ミサヲとともに大阪から長崎に帰郷。出征が決まった幼なじみから好意を寄せられ、動揺する中、原爆が投下される。焼け野原で2人の学友と再会し、経験が少ないながら救護に当たるが、次々と人が亡くなっていく現実に3人は次第に感情を抑えられなくなっていく。

1980年(昭55)に日本赤十字社長崎県支部が刊行した、看護師の証言集「閃光の影で-原爆被爆者救護赤十字看護婦の手記-」を原案として脚本に落とし込んだ。その脚本を元に演じた、映画初主演でスミを演じた菊池日菜子をはじめ俳優陣の力がこもった芝居が、物語をさらに真に迫ったものにしている。

印象的なのが、3人が焼け野原の中でケンカするシーンだ。怒りや悲しみの中にも、ゆるしが必要だと訴えるカトリック信者ミサヲと、戦争への憎しみを真っすぐにぶつけるアツ子の衝突をスミが止めに入る。ミサヲ役の川床明日香の、感情の爆発も1つのポイントだが、変わり果てた家族を目の当たりにして原爆を憎み、父を救出したミサヲやスミにも怒りをぶつける自身も許せない、アツ子役の小野花梨の芝居は、負傷した足を引きずる動きを含め、出色だ。【村上幸将】

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