花組トップ明日海(あすみ)りおが、新年幕開けの正月作で「永遠の美少年」に臨む。萩尾望都氏の傑作漫画を初舞台化したミュージカル・ゴシック「ポーの一族」で、永遠の命を持つエドガー役を演じる。演出の小池修一郎氏が、萩尾氏に申し出てから32年を経て明日海主演で実現。兵庫・宝塚大劇場で来年1月1日~2月5日、東京宝塚劇場で同2月16日~3月25日。
美貌とともに、汚れない「白さ」も群を抜く。
「でも、彼ら(漫画の主人公)はいいですね。意識しなくても美しさは持続する。私たちは清く正しく美しく、美しさを磨き続けていて、手入れが(笑い)」
原作漫画から美しく見える角度を研究。普段着も最近着なくなっていたフリル付きシャツを選ぶように。稽古場に漫画に登場するバラも飾られ、花好きだけにテンションも上がる。
「最初は心配で。永遠の命を持つバンパネラ(吸血鬼)にはなれないし(笑い)。我々は原則として、長くても十何年で卒業していく。限りある中で舞台に立っているので、永遠ってどんな気持ちなのか-。でも楽曲ができ、何ともいえない寂しさ、もの悲しさ、孤独感、人恋しさがわいてきました」
妹を守ろうと闘う役だが、明日海に兄弟はいない。
「その辺の共感も難しいし、エドガーには圧倒的なオーラがある。ふとした表情も神秘的で、引きつけられるところ。そういう独特の雰囲気を出せるように」
印象的な巻き毛のカツラと、自らの頭身バランスも計算。水色のコンタクトレンズは、濃淡の複数種を試す。ビジュアルから徹底的にこだわって役作りをするが、今回は32年待って舞台化を実現させた小池修一郎氏の思いも乗る。
「稽古中も小池先生が本当に楽しそうで。作品への愛はひしひしと感じます」
小池氏は「エリザベート」「スカーレット・ピンパーネル」など劇団代表作も手がけ、妥協を知らない厳しい指導で知られる。
「少年ですが、年を重ねているので(声、表情について意見を)聞くんですけど、先生は『心配しなくても大丈夫』と。今までダメ出しの連続でエンジンをかけてもらっていたので、今回は逆に私、心配で」
主人公の友人役、美青年アランは、柚香光(ゆずか・れい)が演じる。花組では、2番手だった芹香斗亜(せりか・とあ)が宙組へ移り、華やかな立ち姿で下級生時代から注目されてきた柚香への期待は高まる。
「(柚香は)感受性が豊かな人。神秘的な部分やオーラを持っている人。(役柄上も)やりやすい」
柚香の長所には奔放さと度胸を挙げた。
「上級生にも、いい意味で遠慮しない。物おじしない。だから、プレッシャーを感じて、彼女の良さを失ってほしくない。その時々、役に打ち込むことでだんだん、責任感が備わればいいんじゃないか」
露出が増える柚香には「表現の幅を広げること」を求め、自身の刺激にもつなげたいという。
「柚香が『今、私が出すパワーはもっともっと、やっていい』と思うぐらい、私は負けない、びくともしない存在でいられたら」
次作本拠地作で天草四郎を演じることも決まった。
「少年が続きますが、未熟ではなく、さらに男役に深みが出たなと思ってもらえるようにしたい」
新体制を率いる明日海にとって、新たな挑戦の年。その初日を本拠地開幕で迎える。【村上久美子】
◆ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」(原作=萩尾望都氏、脚本・演出=小池修一郎氏) 72年「別冊少女コミック」に第1作目を発表以来、幅広い読者に愛される傑作漫画が原作。永遠の命を持つバンパネラ「ポーの一族」に加わったエドガーが、アランやメリーベルを仲間に加え、時空を超えて旅を続ける様を描く。演出の小池修一郎氏は今作のミュージカル化を夢見て劇団へ入団。85年に舞台化を申し出て以来、32年の時を経て悲願の舞台が実現する。
☆明日海(あすみ)りお 6月26日、静岡市生まれ。03年入団。月組配属。08年「ミー&マイガール」で新人公演初主演。12年、月組準トップ。「ベルサイユのばら」などで当時トップの龍真咲と異例の主演役がわり。花組へ移り14年5月、同トップ。一昨年の台湾公演に主演。今年3人目の相手娘役に仙名彩世を迎え、5組トップ最上級生。来年7月の次作本拠地作で天草四郎役が決まっている。身長169センチ。愛称「みりお」「さゆみし」。