モンスター級のマッコウクジラと捕鯨船船員の死闘などを描いた映画「白鯨との闘い」(16日公開)の一般試写会が12日、大阪・梅田ブルク7であり、ニュースキャスター辛坊治郎氏(59)が自身の“クジラ体験”を披露した。

 「何でここに呼ばれたか。誰も知らないと思いますが、2年半前に船を沈めてるんです」。自虐的な笑いで始まった辛坊氏のトーク。13年、2人でのヨットによる太平洋横断中、クジラとみられる生物に衝突された話は有名だ。「今日は皆さんに、僕が味わったものと同じ恐怖を味わってもらえるのが、うれしい」とわが意を得たように語り始めた。

 同氏によると生物は映画に登場するのと同じ「マッコウクジラに間違いない!」。ヨットを脱出する際に抜き取ったSDカードに記録されたデータを専門家に検証してもらい、確認してもらったとか。

 「当時の状況は波の高さ5メートル、風速20メートルです。そこに『ガーン!』と何かが衝突したのはわかったけど、みるみるうちにヨットが浸水、15分で沈むのが確実な状況になった」。マストに縛り付けた救命ボートで脱出するしかなく、パンツ1丁で巻き付けたロープと格闘。出発直前にスタッフからもらった小さなナイフで何とか切り離したが、今度は流されるボートをつなぐ紅白のヒモに必死でしがみつき、何とか脱出できたとか。

 人間が死に直面した時に何を考えるか。辛坊氏は「何でこのヒモ、紅白やねん。ちっともめでたくないがな。でも、白黒やったら、縁起が悪いしな」とバカなことを考えたという。

 「その時、聞こえた悪魔のささやきも覚えています。『辛坊、海に飛び込め。そしたら、お前だけは助かるぞ』と」。同乗のパートナーは目が不自由だった。「でも、そこで損得勘定が働きました。全盲の人を死なせて、自分だけが生き残ったら、助かっても人生おしまい。それなら2人で死んだ方がましや」と踏みとどまって? パートナーと2人で脱出した…。

 今回のトークには女性MCもいたが、辛坊氏の臨場感あふれる機関銃トークは、完全にMCいらず。ほとんど唯一のMCの質問は「太平洋横断再チャレンジは?」で「実は準備だけは整ってます。(あの挑戦後)ヨットはすでに造ってますから、行こうと思えば明日にでも行けます。でも、今度行くなら周囲に迷惑をかけず、ひっそりと行きます」。日本中騒がせた救出劇を反省、控えめに答えた。

 ジョークを交えた熱烈トークを終え、最後はしっかり映画をPRした。「みなさん、今日の映画は実話です。GPSも携帯電話もない時代に(洋上で)何が起こったのか。作り話とは根本的に違うホンモノですよ」。同作を宣伝するのに、おそらく日本で1番似合う男の訴えに、観客の多くは笑いながらも妙に納得顔でうなずいていた。