有村架純(23)が新人賞を射止めた。第29回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が5日、決定した。「何者」「夏美のホタル」などで自然で透明感あふれる魅力を発揮した。授賞式は28日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる。

 有村は受賞を「本当に光栄です」と喜ぶと同時に、新たな思いを胸に抱いたと話した。「新人か否かのはざまの微妙な中、『(女優として)新たな道筋を立ててやっていかなきゃ』と思っていた中での受賞。新人賞をいただけるのは、これが最後という気がして、『新人』という言葉に区切りがつけられそうです。これからは、甘えは通用しない、実力を上げなきゃいけないと思うので、受賞は背中を押される感覚です」。

 就活を描いた「何者」では、ものごとをまっすぐに見る女子大生を演じ、元彼(菅田将暉)と自分に思いを寄せる男性(佐藤健)の間で揺れる気持ちを表現した。「余計な感情を入れてしまうといやらしくなり、どの人にもいい顔をしている女の子に見えたりする。余計なことを考えないと心の中で唱えていました」。

 そぎ落として本質を表現する。そう意識できたのは主演映画「夏美のホタル」の広木隆一監督(62)の「演技は引き算。余計なことはするな」という言葉のおかげだった。広木監督には15年「ストロボ・エッジ」で徹底的に演技指導を受けた。「今でもそれをベースでお芝居に取り組んでいます。『本当に心で思っていたら伝わる。無から伝わる』とも言われました」。

 今最も多忙な女優といっていい。13年NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で全国区の人気を獲得後、好感度女優としてCM契約も急増。昨年は「ストロボ・エッジ」「ビリギャル」の主演映画2本合計の興収が50億円を超えた。今年も主演やヒロインの映画が4本公開。大みそかのNHK紅白歌合戦では紅組司会に抜てきされた。今は来年4月スタートでヒロインを演じるNHK連続テレビ小説「ひよっこ」収録に追われている。「しんどい時はあります。でも、やるしかない。お芝居が楽しいので。現場で『本番!』と声が掛かった瞬間、全部を忘れられます」。

 映画デビューから5年。ステップアップを重ねてつかんだ新人賞。「これを励みに、もっと引き出しを増やしたい」。人気と実力を兼ね備えた“最強の新人”はさらなる飛躍を誓った。【中野由喜】

 ◆有村架純(ありむら・かすみ)1993年(平5)2月13日、兵庫県生まれ。10年テレビ朝日系「ハガネの女」で女優デビュー。11年「阪急電車 片道15分の奇跡」で映画デビュー。16年「ビリギャル」で日本アカデミー賞新人賞。160センチ。血液型B。

 ◆何者 拓人(佐藤健)は瑞月(有村架純)理香(二階堂ふみ)光太郎(菅田将暉)と就活の情報交換を始める。内定をもらえないストレスをSNSに吐き出すようになる。三浦大輔監督。

 ◆夏美のホタル 写真家を志す夏美(有村架純)は恋人慎吾(工藤阿須加)から離れて旅に出る。亡き父との思い出が詰まった田舎町で商店主人の地蔵さん(光石研)と意気投合する。広木隆一監督。

 <新人賞・選考経過> 有村について「彼女の存在で作品が良くなったものが多い。きれいでまっすぐさを感じる」(神田紅氏)「『夏美のホタル』では1人で作品を持たせていた」(寺脇研氏)など新人らしさと実力が評価された。1回目の投票で過半数。