夏木マリ(65)が3日、東京・渋谷のユーロスペースで、主演映画「生きる街」(榊英雄監督)の初日あいさつに出席した。

 東日本大震災を機に、津波で流された漁師の夫を待ち続ける母を演じた。16年に宮城・石巻で2週間にわたり撮影。普段の「おしゃれな夏木マリ」を封印し、田舎でけなげに生き抜く母、妻になりきった。「(被災地で)震災を体験していないから、うそをつきたくないし、演じ手としては普通のおばちゃんの役をやりたかった」。娘役の佐津川愛美(29)は「初めてお会いしたときは、かっこいいイメージのマリさんでした。でも、衣装合わせをした写真を見たら、『あ、私の思っているマリさんじゃない。(夏木が演じた)千恵子さんだ』と思いました」と変身ぶりに舌を巻いた。

 役を引き受けた理由を聞かれた夏木は、「監督の顔を見たら…」と明かした。司会者から「ビジュアル系だからね」と突っ込まれると、「そういう意味じゃない(笑い)。千恵子さんは元気なDNAを持っていて、だから監督が選んだのかなと思った。元気なおばさんという共通項があったのかな」と推測した。

 ロケ現場では、息子役の堀井新太(25)と長時間、演技論をかわすこともあったという。夏木が「休憩時間に演技論を教えていただいたんです」と明かすと、堀井はあわてて「僕が教わったんです」と訂正した。2人の激論後、佐津川が堀井に「すごくしゃべってたね」と内容を聞いたところ、堀井は「(夏木が)リンゴを食べるといいと言ってた」と答えたという。佐津川が「演技論のことは言われなかった」と突っ込むと、堀井は「そこは胸にしまっておきたかったんです」と説明した。

 劇中では、「頑張れ」という意味の「けっぱれ」という言葉がキーワードになっている。「最近、けっぱっていること」を聞かれると、夏木は「『生きる街』のキャンペーンで、アイドル並みにテレビに出ています。1日3本とかですよ。昨日も収録を4時間やってて、最初は頑張ってても後半は眠くなっちゃう(笑い)。でも、けっぱってます。この映画の存在を知ってもらうために、主演にはお伝えする責任があると思う」と胸を張っていた。