日本テレビ系「笑点」の司会などで知られた落語家桂歌丸(かつら・うたまる)さん(本名・椎名巌=しいな・いわお)が2日午前11時43分、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患のため横浜市内の病院で亡くなった。81歳。肺気腫などで入退院を繰り返し今年4月から入院していた。

 日本テレビ系「笑点」の司会を歌丸さんから引き継いだ春風亭昇太(58)は「落語に対する情熱がすごい人だった。その姿勢を後輩に見せてくれました」と悼んだ。昇太によると、歌丸さんは口数多く指導することはなかったという。「直接ああしなさい、こうしなさいとは言わなかった。落語に取り組む姿を見せてくれたので、本当に残念です」。

 本を読んでいるとよく褒められたという。昇太は「ニコニコして『昇太くんはよく本を読んで勉強してるね』って言ってくれました。僕は勉強しているつもりで本を読んでいるわけじゃなかったけど、後輩のそういう姿が好きだったみたいです」と振り返った。

 最後に会ったのは4月7日で、「笑点」の前に放送する「もう笑点」(日曜午後5時25分)の収録だった。体調は良さそうだったという。「もっと休んでゆっくり仕事をしてもらいたかった。立派な人生だったと思います。かっこいい人だと思います」と話した。

<「笑点」大喜利メンバーのコメント>

 ◆三遊亭好楽(71) 昭和41年に笑点が始まり、落語ブームの頂点に立った歌丸師匠が番組に頼らず、自分をおごらず、円楽、談志、志ん朝、円鏡(円蔵)の活躍を一切気にも留めず、わが道を行く姿は、古武士のごとく素晴らしい生き方をした方だと思います。新作から古典落語の独演会や円朝物に挑戦し、一時代を築きあげた。あの痩せた体から、どうしてこのようなエネルギーが生まれるのかただただ驚き、そして尊敬の一言です。我々に温かく接し、教えてくださった歌丸師匠に感謝、感謝、感謝です。ありがとうございました。合掌。

 ◆林家三平(47) 入ったばかりの私に、いつも温かい言葉をかけて下さったこと、一生忘れません。私の家族まで気にかけて下さいました。「お母さんは苦労したから大切にね」、「(海老名)美どりちゃん、何とかしなさいな、(夫の)峰(竜太)さんがありゃかわいそうだよ」と思わず笑顔になる一言が、収録現場で緊張する私の肩の力を抜いて下さいました。「慌てず、急がず、自分のペースで」と指南もして下さいました。師匠、本当に本当にありがとうございました。自分ももっともっと精進いたします。ご冥福をお祈りいたします。

 ◆林家たい平(53) 突然の訃報で、まだ言葉が見つかりません。病室で毎日、発声練習をなさってると聞いてましたので、近々、お顔を見に伺おうと思っていた矢先でした。笑点に入って、まだどうしたらいいのか分からない時、優しいお言葉をかけていただき、どんなに助けていただいたか分かりません。師匠に出会えましたことは、私の落語家人生にとって宝物となりました。今まで落語界のため、笑点のため、本当にありがとうございました。最後の最後まで落語に向き合った師匠は格好よかったです。ご冥福をお祈りいたします。

 ◆座布団運び担当の山田隆夫(61) 先日、歌丸師匠の容体が良くないと連絡があり、急いで病院へ駆けつけました。「歌丸師匠。山田隆夫です!」と言ったところ、つむっていた目を急に開けて、ボクの顔をしっかり見て「山田くん、ありがとう!」とおっしゃっていただきました。歌丸師匠! こちらこそ子供のころから面倒を見ていただき、本当に、本当に、ありがとうございました!