俳優田村正和(たむら・まさかず)さんが4月3日に心不全のため亡くなっていたことが18日、分かった。77歳だった。

一夜明けた18日、出演ドラマ「うちの子にかぎって…」(84年)「パパはニュースキャスター」(87年)などさまざまな作品で田村さんと現場をともにしたTBS顧問プロデューサー八木康夫氏が日刊スポーツの取材に応じ、田村さんをしのんだ。

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田村さんとの最初の出会いは、不倫を描いたドラマ「くれない族の反乱」(84年、主演大原麗子)だった。

「離婚成立で奥さんが子どもを引き取ることになり、最後の1日を子どもと過ごすシーンが向ケ丘遊園であったのですが、田村さんのお芝居が本当に素晴らしくて、モニターで見ていて涙が出てきまして。女優さんとのラブシーンもすてきですが、子どもとの芝居もこんなにチャーミングなんだと。その後、時間を置かずに『うちの子にかぎって…』の企画に入ったのですが、先生役を誰にするかとなった時、すぐに田村さんが思い浮かびました。絶対断られると思いながらもお願いしました」。

当時、田村さんは京都でフジテレビ時代劇「乾いて候」を撮影中。スケジュール的に無理と思われ、所属事務所も難色を示していたが、直接本人にプレゼンしたところ、その場でOKが出た。田村さんは、真夏に京都と東京を往復するハードスケジュールで作品に取り組んでくれたという。

小学校の先生役という今までにない役どころ。八木さんは「役者が『こういう役をやりたい』と言ってはいけない、というのが田村さんの持論。『こんな役をやってほしい』と思わせる役者でありたい、リクエストに応える役者でいたい、といつもおっしゃっていた。田村さんだからこその選択だったと思います」。

「うちの子にかぎって…」はコメディー色が強い台本ではなかったというが、田村さんの魅力でどんどん面白さが増したという。

「田村さんが演じると笑っちゃうシーンが次から次へと出てきて、今までの二枚目とのギャップがすごかった。予想以上に作品が面白くなって、今度は本当にコメディーを、となって『パパはニュースキャスター』につながりました」。

田村さんのコメディー力は天性のものだったという。

「喜劇って誰にでもできるジャンルではなくて、持って生まれた才能、センスなんですよ。田村さんはギャグをやったり動作で笑わせようとか一切していないのに、まじめにやればやるほどおかしいという」。

田村さんのスター性について「昭和からスターさんはたくさんいますが、時代劇、ラブストーリー、喜劇、古畑任三郎のような人気シリーズまで、ここまで幅広いジャンルをできる人はまずいらっしゃらない」。最後にタッグを組んだのは、14年の「おやじの背中」。娘を思う切ない親心を演じた。「まったく喜劇ではない、ああいうオーソドックスなテイストの父親の愛というものもちゃんと表現なさる。本当に、すごい俳優さんだと思います」。

八木さんは「私もプロデューサーになって40年になりますが、正和さんと出会わなかったらこんなに長きにわたって仕事はできなかった。節目節目で正和さんとご一緒できたことは、私のプロデューサー人生としても幸せなことでした」と話している。

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