堀井美香アナウンサー(50)が3月末をもってTBSを退社し、ナレーション、朗読のスペシャリストとして、声を武器に大海原へこぎ出した。このほど日刊スポーツのインタビューに応じ、フリーとなった心境や、同局安住紳一郎アナ(48)、TBS出身の久米宏氏(77)とのエピソードなどを語った。

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退社の日、TBS本社前の広場で多くの同僚アナに見送られた。「『堀井さ~ん!』って大きい声がして、半信半疑で近づいていったら後輩たちがいました(笑い)」。夕方にもかかわらず早朝番組の担当者や休日の人も含め、30人ほどが集まったという。朗らかな人柄で親しまれ、惜しまれての“卒業”となった。

24歳で結婚し、2子の出産育児を経験した「ママアナ」の先駆け的存在だ。子育てに集中した20代を経て、30代から仕事モードにギアチェンジ。管理職もこなし「自分の中で、こうならないとなと思っているところに割と早く到達した時期が2年くらい前。次を考えてもいいのかな」と、この1年で退社の意思を固めたという。ポッドキャスト番組で共演する「妹のような」コラムニスト、ジェーン・スー(48)には夫より先に退社を相談し「厳しい方を選択しろって言う人。不安を一蹴する感じですよね」。夫からも「いいじゃん」と後押しを受けたという。

今後は、TBSで専門性を磨いたナレーションや朗読を中心に活動する。フリーとなって初めて開催する6月の朗読会のチケットは、販売開始10分で完売。堀井アナは「赤字なんです~」と豪快に笑ったが、幸先のいい船出となったようだ。小規模な朗読イベントで全国を巡る構想も秘めており「会社の時と違って、自分の価値観や大事にしているもので行動できる。自由にやりたいと思います」。

退社日に同僚を集めたのは、安住アナのサプライズだったという。同アナには1年下の後輩として全幅の信頼を置き「オールマイティーにできる彼以上のアナウンサーは、今後絶対出てこない」と感謝とともに断言する。多くの仲間が集った自身の人徳を「安住パワーってすごい」とはぐらかしつつ、自分の性格を「大ざっぱ」と表現。「私が寛容であった故に慕ってくれていたのであって、『ここ何で勤務1時間多いの?』って言う管理職だったら、ああはならなかったですよね」と笑う。

退社5日前には「久米宏 ラジオなんですけど」で長く共演したTBS出身の大先輩・久米氏から、はなむけのメールを受け取ったという。「久米さんから『神宮の桜がきれいです。桜はあと5日か。どんなふうに咲いて散っていくんだろう』みたいな文章がきて。私、その日上野で桜を見ていたから『上野の桜は最高でしたよ!』って返信したんです。でも違う、これは私の卒業のことを言ってるんだと気づいて。ただの桜のメールではなかった(笑い)」。このマイペースさも、好かれる一面だろう。     【遠藤尚子】

 

◆堀井美香(ほりい・みか)1972年(昭47)3月22日、秋田県生まれ。法大卒業後の95年4月にTBSに入社し、今年3月末に退社。フリーアナとして、フロム・ファーストプロダクションに所属する。BS-TBS「世界の窓」ナレーション、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の“OVER THE SUN”」(金曜配信)に出演中。1男1女の母。